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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

➋ 自衛隊病院の拠点化・高機能化

自衛隊病院は、各種事態においては、活動地域から後送された隊員などを収容・治療する病院としての役割を果たし、また、平素においては、隊員やその家族などの診療を行う病院としての役割を果たしている。このほか、医療従事者の技量の維持・向上及び養成のための教育機関としての役割も有している。

防衛大綱及び中期防は、自衛隊病院の拠点化・高機能化については、引き続き、人材と医療資源を集中し、一般的な診療に加え、感染症対応、銃創などの外傷あるいはNBC兵器による攻撃などによる負傷者に対しても一定程度の診療能力を有する後送病院としての対応能力の向上を図り、効率的かつ質の高い医療体制の確立を図ることとしている。これまで、地域医療においては、一部の自衛隊病院が地方公共団体の二次救急医療機関の指定を受けて、救急患者の受入れを積極的に行うなど、医療の高度化を進めてきた。特に自衛隊中央病院においては、年間約6,600台(19(令和元)年実績)の救急車の受入れを行った。

新型コロナウイルス感染拡大を受けた防衛省・自衛隊の取組として、自衛隊病院や防衛医科大学校病院においては、20(令和2)年2月1日から新型コロナウイルス感染症患者を受入れている。これまでに、自衛隊中央病院のほか札幌、横須賀、阪神、福岡、熊本の各自衛隊地区病院及び防衛医科大学校病院において、430名の新型コロナウイルス感染症患者を受入れた(5月31日時点)。

参照III部1章4節3項(自衛隊病院などにおける取組)

自衛隊中央病院及び防衛医科大学校病院は、第一種感染症指定医療機関4の指定を受けており、感染症対応にかかる訓練を実施している。例えば、自衛隊中央病院は、定期的に、一類感染症5感染者が発生したとの想定に基づき、感染症患者受入訓練を実施し、患者発生時の関係機関との連携要領の確立を図っている。新型コロナウイルス感染拡大を受けた活動においても、本訓練の経験が活かされた。

さらに、防衛省・自衛隊においては、今般の新型コロナウイルス感染拡大を受けた取組における教訓事項を活かし、令和2年度第1次補正予算及び第2次補正予算において、感染者の受入れなどに対応するための人工呼吸器や陰圧設備など医療用器材等の整備、感染者等の輸送に必要となる救急車等の整備、新型コロナウイルス対応に必要な防護服等の整備、現地に展開して肺炎の診断に活用できるCT診断車や医療用器材の整備などを実施し、衛生機能のさらなる強化を図ることとしている。

参照II部4章2節1項(防衛関係費の概要)

このほか、自衛隊中央病院は19(令和元)年5月、首都直下地震が発生したとの想定に基づき、陸自東部方面隊や陸自衛生学校のほか、日本赤十字社、日本DMAT、世田谷区医師会などの参加を得て、大量傷者受入訓練を実施した。自衛隊中央病院は、このような訓練を通じて、関係機関との連携強化や災害拠点病院に準じた医療機関としての能力向上を図っている。また、令和元年東日本台風(台風19号)に伴い郡山市に所在する民間病院が保有するCT等が冠水したため、福島県知事の災害派遣要請に基づき、19(令和元)年10月18日から11月5日までの間、自衛隊富士病院からCT診断車を派遣し、230名の診療支援を行った。

さらに、新型コロナウイルス感染症に対する市中感染対応にかかる災害派遣では、長崎県の岸壁に係留中に集団感染が発生したクルーズ船「コスタ・アトランティカ号」(乗員約620名)に対しても20(令和2)年5月2日から5月14日までの間、自衛隊富士病院からCT診断車を派遣し6名の撮影を行った。

4 第一種感染症指定医療機関とは、一類感染症、二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院をいう。(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第6条)

5 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第6条)