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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

第2章 防衛計画の大綱など

第1節 防衛計画の大綱の概要

防衛大綱は1976(昭和51)年に初めて策定されて以来、計5回策定されており、13(平成25)年に「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(防衛大綱)1として、新たな指針が策定されている。防衛大綱はわが国を取り巻く安全保障環境や世界の軍事情勢の変化を把握し、これらを踏まえつつ、わが国の防衛力のあり方と保有すべき防衛力の水準について規定するいわばわが国の平和と安全を確保するグランドデザインである。このため、防衛大綱は常に安全保障環境の現実に真正面から向き合い、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を示すものでなければならない。

参照図表II-2-1-1(防衛力の役割の変化)

図表II-2-1-1 防衛力の役割の変化

1 基本的な考え方

現在の防衛大綱は、国家安全保障戦略を踏まえて初めて策定されたものであり、新たな安全保障環境2のもと、わが国の地理的特性3も踏まえたうえで、わが国の平和と安全を守る中核として、「統合機動防衛力」を構築することとした。

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、いわゆるグレーゾーンの事態(I部1章1節参照)を含め、自衛隊の対応が求められる事態が増加するとともに長期化しつつある。

このような中、自衛隊の活動量を下支えする防衛力の「質」と「量」の確保が必ずしも十分とは言えない状況となっていた。防衛大綱では、このような反省点に立って、より統合運用を徹底し、装備の運用水準を高め、その活動量をさらに増加させるとともに、各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていくこととした。このため、自衛隊全体の機能・能力に着目した統合運用の観点からの能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出すこととした。このような能力評価の結果を踏まえることで、刻々と変化するわが国を取り巻く安全保障環境に適応し、メリハリのきいた防衛力の効率的な整備が可能となったことに大きな意義がある。

併せて、後方支援基盤をこれまで以上に幅広く強化し、最も効果的に運用できる態勢を構築することとした4

参照資料6(平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について)

1 13(平成25)年12月に国家安全保障会議と閣議において決定

2 防衛大綱では、新たな安全保障環境として、グローバルな安全保障環境とアジア太平洋地域における安全保障環境について記述している。このうち、グローバルな安全保障環境としては、①国家間の相互依存関係の一層の拡大・進化、②グレーゾーンの事態の増加、③パワーバランスの変化、④公海の自由の不当な侵害、⑤宇宙空間・サイバー空間の安定的利用の確保の重要性などを記述している。また、アジア太平洋地域における安全保障環境としては、グレーゾーンの事態が長期化する傾向が生じており、これらがより重大な事態に転じる可能性など全般的な情勢について記述しているほか、北朝鮮、中国、ロシア及び米国の軍事動向などについても記述している。

3 防衛大綱では、わが国の地理的特性として、わが国は海洋国家であり、海上交通及び航空交通の安全を確保することが平和と繁栄の基礎であるということ、また、自然災害の多発、人口の集中、沿岸部にある多数の原子力発電所など、安全保障上の脆弱性を抱えている旨記述している。

4 具体的には、訓練・演習、運用基盤、人事教育、衛生、防衛生産・技術基盤、装備品の効率的な取得、研究開発、地域コミュニティーとの連携、情報発信の強化、知的基盤の強化、防衛省改革の推進など、幅広い分野を防衛力の能力発揮のための基盤として強化するとした。