第III部 わが国の防衛に関する施策
3 日々の教育訓練

自衛隊においては、わが国の防衛をはじめとする各種任務を遂行するため、指揮官をはじめとする各隊員の高い知識・技能の修得や部隊の高い技量・士気の維持が必要である。これは、各種事態における自衛隊の迅速・的確な対処を可能とすると同時に、わが国への侵略を意図する国に対し、それを思いとどまらせる抑止力としての機能を果たしている。
教育訓練は、このような人的な面で自衛隊の任務遂行能力を強化するためにきわめて重要である。このため、自衛隊は種々の制約の中、事故防止などの安全確保に細心の注意を払いつつ、隊員の教育や部隊の訓練などを行い、精強な隊員や部隊を作り上げることに努めている。

教育の様子
教育の様子
1 自衛官の教育

(1)教育の現状
部隊を構成する自衛官個々の能力を高めることは、部隊の任務遂行に不可欠である。このため、自衛隊の学校や教育部隊などで、階級や職務に応じて段階的かつ体系的な教育を行い、必要な資質を養うと同時に、知識・技能を修得させている。
たとえば、航空機の操縦士や航空管制官などの養成には長い期間にわたる教育を要するうえ、これらの教育には特殊な技能を持つ教官、装備品や教育施設を整備する必要もある。このように、教育は、防衛省・自衛隊として非常に大きな人的・時間的・経済的努力が必要である。また、専門の知識・技能をさらに高める必要がある場合や、自衛隊内で修得することが困難な場合などには、海外留学を含め、部外教育機関1、国内企業、研究所などに教育を委託している。
参照 資料87

(2)統合教育
統合運用体制をより充実させるためには、統合運用に関する知識・技能が不可欠であり、統合教育はきわめて重要である。そこで自衛隊は、上級部隊指揮官または上級幕僚となる幹部自衛官が統合教育を受ける統合幕僚学校2を主体とする統合教育体系を形成し、同校をはじめ陸・海・空各自衛隊の幹部学校3などにおける統合教育を充実させている。

2 自衛隊の訓練

(1)各自衛隊の訓練
各自衛隊の部隊などで行う訓練は、隊員それぞれの職務に必要な技量の向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な行動の練成を目的とした部隊の訓練とに大別される。隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練は、小部隊から大部隊へと訓練を積み重ねながら、部隊間での連携などの大規模な総合訓練も行っている。
参照 資料88
また、このようなわが国の防衛のための訓練に加え、国際平和協力活動や大規模災害への対応など、近年の自衛隊の任務の多様化に対応した訓練の充実にも努めている。

(2)統合訓練
各種事態の推移に応じて、各自衛隊が一体となって有機的に対処するため、各種統合訓練を行い、より一層の統合運用の強化を図っている。また、統合運用および各種事態への対応の強化を図るため、各自衛隊の能力を維持向上させるとともに、自衛隊の統合運用および各自衛隊による二国間、多国間の共同訓練の拡大を図っている4

国外における訓練の様子
国外における訓練の様子
訓練の様子
訓練の様子

(3)訓練の制約と対応
自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境において行うよう努めているが、制約も多い。こうした制約に対応するため、各自衛隊は限られた国内演習場などを最大限に活用しているほか、国内では得られない訓練環境を確保できる米国およびその周辺海空域において実射訓練や日米共同訓練を行い、より実戦的な訓練を行うよう努めている。
参照 資料89

3 安全管理への取組と課題

自衛隊の任務がわが国の防衛であることなどから、訓練や行動に危険がともなうことは避けられない。しかし、国民の生命や財産に被害を与えたり、隊員の生命を失うことなどにつながる各種の事故は、絶対に避けなければならない。
安全管理は、不断の見直し、改善が不可欠であり、防衛省・自衛隊が一丸となって取り組むべき重要な課題である。防衛省・自衛隊では、今後も平素からの艦艇・航空機の運航や射撃訓練時など日頃の訓練の際にも安全確保に最大限留意するとともに、海難防止や救難のための装備、航空保安無線施設の整備なども進めていくこととしている。


1)平成25年度の部外教育機関は、国内では東京工業大学、早稲田大学、海外では米国国防大学、ハーバード大学など
2)統合幕僚監部に附置される学校で、幹部自衛官に対し統合運用に関する教育を行っている。
3)各自衛隊の幹部自衛官などに対する、安全保障や防衛戦略などの教育を行う各自衛隊の機関
4)わが国への直接の脅威を防止・排除するための演習である自衛隊統合演習、日米共同統合演習、弾道ミサイル対処訓練などのほか、国際平和協力活動などを想定した国際平和協力演習、捕虜などの取扱いについて演練する統合国際人道業務訓練などがある。
 
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