第III部 わが国の防衛に関する施策
第3章 防衛生産・技術基盤の維持・強化と防衛装備品の効果的・効率的な取得

わが国周辺の安全保障環境が厳しさを増している一方、わが国の防衛関係費については依然として厳しい状況が続いている。このような中で、高性能化・複雑化している防衛装備品を安定的に整備していくためには、効果的・効率的な取得に努めつつ、わが国の防衛生産・技術基盤を維持・強化していくことが重要である。
本章では、このような取組について説明する。

第1節 防衛生産・技術基盤と防衛装備品の取得をめぐる現状
1 わが国の防衛生産・技術基盤について
1 わが国の防衛生産・技術基盤の特性と現状

防衛生産・技術基盤とは、防衛省・自衛隊の活動に必要な装備品などを開発・生産・運用・維持・整備・改造・改修するための人的、物的、技術的基盤である。わが国には工廠(しょう)(国営工場)が存在しないことから、生産基盤の全てと技術基盤の多くの部分を防衛装備品などを生産する企業(防衛産業)が担っている。防衛装備品の生産には中小企業が携わっており、たとえば、戦闘機関連企業は約1,200社、戦車関連企業は約1,300社、護衛艦関連企業は約2,500社ともいわれている。また、防衛装備品については、市場が防衛省による少量の需要に限定されていることから、量産効果は期待しにくい状況にある。さらに、防衛装備品の開発・製造には特殊かつ高度な技術や技能が必要とされ、そのような技術や技能の育成・維持には多くの努力を要する。
このようなわが国の防衛産業の規模は大きくなく、わが国の工業生産額全体に占める防衛省向け生産額の割合は1%以下となっている。また、防衛装備品などの生産に従事する企業における防衛需要依存度(防衛関連売上/会社売上)は平均で4%程度と、多くの企業では、防衛事業が主要な事業とはなっていない。他方、比較的小規模な企業の中には防衛需要依存度が50%を超える企業も存在し、そのような企業は防衛省からの調達が変動すると大きな影響を受けることとなる。
(図表III-3-1-1参照)

図表III-3-1-1 わが国における防衛産業の規模および防需依存度
2 防衛生産・技術基盤を国内に保持する意義

国内にこのような基盤を保持することは、わが国の国土の特性などに適合する装備品の開発・生産を容易にしたり、緊急時の対応を含む、装備品の維持・整備の効果的・効率的な実施を可能とすることを通じて、保有数の範囲で必要な可動数を確保できるという意義を有する。また、こうした基盤の保持は、海外から装備品を調達する場合や国際共同開発・生産へ参加する際に、相手国との交渉力を確保できるといった意義も有している。さらに、国内企業が装備品の開発を通じて獲得した新技術を、民生品に応用できる波及効果も期待できる。

 
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