第II部 わが国の防衛政策と日米安保体制
第5節 グローバル・コモンズの安定的利用など

近年では、宇宙、サイバー空間、海洋といった国際公共財(グローバル・コモンズ)の安定的利用に対するリスクが新たな安全保障上の課題となってきている。
その背景には、軍事科学技術や情報通信技術の一層の進展などの結果、サイバー空間や宇宙空間といった従来の地理的な視点では捉えきれない領域における活動が、国家の安全保障や人々の生活の重要な基盤となっていることがある。
また、海上交通の安全確保についても、近年の海賊行為の多発や航行の自由に関連した議論などを含め、大きな関心を集めている。

1 宇宙開発利用

専守防衛を旨とするわが国にとっては、各種事態の兆候を事前に察知するための情報収集やわが国周辺海空域の警戒監視機能を強化する上で、また、自衛隊が国際平和協力活動などにおける通信手段などを確保する上で、いかなる国家の領域にも属さず、地表の地形などの条件の制約を受けない宇宙空間の利用はきわめて重要である。
宇宙基本法に基づき、内閣に設置された宇宙開発戦略本部は、09(同21)年6月、宇宙基本計画を決定し、13(同25)年1月には、「安全保障・防災」、「産業振興」、「宇宙科学等のフロンティア」の3つの課題に重点を置いた新たな宇宙基本計画が決定されている。また、12(同24)年7月、新たに宇宙戦略室が内閣府に設置され、宇宙開発利用に関する政策の企画・立案・調整などを行っている。
一方、防衛省においても09(同21)年1月に、宇宙開発利用推進委員会において、「宇宙開発利用に関する基本方針について」を決定している。
今後、防衛省としては、関係府省との連携を図りつつ、安全保障分野における宇宙開発利用を推進していくこととしている。平成25年度においては、<1>宇宙を利用したC4ISRの機能強化のための調査・研究、<2>Xバンド衛星通信の整備・運営、<3>米空軍宇宙基礎課程への派遣、<4>宇宙状況監視に関する取組などの事業に取り組むこととしている。

 
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