第II部 わが国の防衛政策と日米安保体制
第4節 国家安全保障会議の創設

わが国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、内閣を挙げて外交・安全保障体制の強化に取り組む必要があるとの問題意識のもと、外交・安全保障政策に関し、戦略的な観点から基本的な方向性を示す「国家安全保障会議(日本版NSC)」の創設に向けた動きが進められている。
第1次安倍内閣において、現行の安全保障会議を抜本的に見直し、その機能を吸収した国家安全保障会議を設置すべく、07(平成19)年4月6日に「安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されたものの、08(同20)年1月に審議未了のため廃案となった経緯がある。
12(同24)年12月、第2次安倍内閣が成立すると、安倍内閣総理大臣は、その就任記者会見において、国家安全保障会議の設置など、外交・安全保障体制の強化に取り組むと表明した。
これを受けて、本年2月、内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官(兼国家安全保障強化担当大臣)、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障会議担当)のほか有識者をメンバーに加えた「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」の初会合を開催した。会合では、冒頭、安倍総理から、内閣を挙げて、わが国の外交・安全保障体制の強化に取り組む必要があり、外交・安全保障に関する諸課題につき、戦略的観点から、日常的、機動的に議論する場を創設し、政治の強力なリーダーシップにより迅速に対応できる環境を整えたいとの発言があった。有識者会議では、全6回にわたって、「国家安全保障会議」の所掌、目的、情報の活用・政策判断、組織のあり方等、そのあるべき姿について検討が行われた。ここでの議論を踏まえ、政府は内閣官房に設置した「国家安全保障会議設置準備室」において法案の作成作業を進め、本年6月7日、以下の内容を柱とする「安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案」(国家安全保障会議設置法案)を閣議決定した。
防衛省としても、防衛政策を担う官庁として、外交・安全保障政策に関し、戦略的な観点から基本的な方向性を示す国家安全保障会議において積極的な役割を果たしていく考えである。

「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」第1回会合に出席する安倍内閣総理大臣(13(平成25)年2月15日)【内閣広報室】
「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」
第1回会合に出席する安倍内閣総理大臣(13(平成25)年2月15日)【内閣広報室】
図表II-1-4-1 国家安全保障会議設置後の体制(イメージ)

【国家安全保障会議設置法案の概要】

(1)国家安全保障会議の設置
わが国の安全保障に関する重要事項を審議する機関として、内閣に「国家安全保障会議」を設置 (現行の「安全保障会議設置法」を一部改正し、「安全保障会議」を改組)。

(2)会議の構成・審議事項
<1>4大臣会合:国家安全保障に関する外交・防衛政策に関し、戦略的な観点から基本的な方向性を示す【新設】
【構成】総理(議長)、外務大臣、防衛大臣、内閣官房長官 1
【審議事項】国家安全保障に関する外交・防衛政策の基本方針等
<2>9大臣会合:現行の「安全保障会議」の文民統制機能の維持等
【構成】総理(議長)、総務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣、内閣官房長官、国家公安委員会委員長 12
【審議事項】国防に関する重要事項 3
<3>緊急事態大臣会合:緊急事態への対処強化【新設】
【構成】総理(議長)、内閣官房長官、事態の種類に応じてあらかじめ総理により指定された国務大臣 1
【審議事項】重大緊急事態等への対処に関する重要事項等(事態対処のオペレーション自体は、既存の対策本部や、内閣危機管理監等を中心とする危機管理体制を活用) 3

(3)資料提供等
関係行政機関の長等は、会議の定めるところにより、会議に対し、国家安全保障に関する資料・情報を適時に提供する。
会議は、関係行政機関の長等に対し、国家安全保障に関する資料・情報の提供等を求めることができる。

(4)服務
議長及び議員(その経験者を含む。)に加えて、副大臣として議員の職務を代行した者、関係者として会議に出席した者及び事態対処専門委員会の委員長(その経験者を含む。)にも守秘義務を課す。

(5)関係者の出席
内閣官房副長官及び国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官(後述)は、会議に出席し、議長の許可を受けて意見を述べることができる。
議長は、統合幕僚長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。

(6)幹事
会議に幹事を置き、関係行政機関等の職員から内閣総理大臣が任命する。幹事は、会議の所掌事務について、議長及び議員を補佐する。

(7)国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官
国家安全保障に関する重要政策を担当する内閣総理大臣補佐官(国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官)を常設する。

(8)国家安全保障局
内閣官房に「国家安全保障局」を設置し、国家安全保障に関する外交政策および防衛政策の基本方針・重要事項に関する企画・立案および総合調整のほか、会議の事務、(3)で会議に提供された資料・情報等の総合・整理をつかさどる。
国家安全保障局長は、内閣危機管理監と同格の特別職の国家公務員とする。国家安全保障局次長(2名)は、内閣総理大臣が指名する内閣官房副長官補を充てる。


1)いずれの会合にも、臨時に必要な国務大臣を議員として参加させることができる。
2)総理に事故のあるとき等に、臨時に総理の職務を行う大臣としてあらかじめ指定された国務大臣(いわゆる「副総理」等)が、議員でない場合には、当該国務大臣も議員として参加する。
3)各種事態に関し、特に緊急に対処する必要があるときは、迅速かつ適切な対処が必要と認められる措置について総理に建議できる。
 
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