第III部 わが国の防衛に関する諸施策
第3節 東日本大震災への対応に関する教訓など
1 東日本大震災への対応の概要

11(平成23)年3月11日14時46分、三陸沖を震源とする最大震度7の大地震(国内観測史上最大のマグニチュード9.0)が発生した。地震により発生した大津波によって、岩手県・宮城県・福島県では海岸沿いの集落が広範囲にわたり水没したほか、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の原子炉が損傷を受け放射性物質が漏出する事故も発生し、大規模かつ激甚な被害をもたらす未曾有の大震災となった。
防衛省・自衛隊は、地震発生直後の14時50分に防衛省災害対策本部を設置するとともに、航空機などによる情報収集を行った。15時30分には第1回防衛省災害対策本部会議を開催、18時00分には大規模震災災害派遣1を、19時30分には原子力災害派遣をそれぞれ防衛大臣から自衛隊の部隊に命じた。これらの命令を受けて自衛隊は、地震発生当日から約8,400人を派遣し活動を行うなど、陸自多賀城駐屯地や空自松島基地などが被災し、航空機や車両が水没する被害を受ける厳しい状況の中、被災者の人命救助のため、可能な限りの人員・装備を投入して、大規模かつ迅速な初動対応を行った。
大規模震災災害派遣においては、災害派遣態勢を強化し、より効果的な被災地での活動を行うため、3月14日に、陸自の東北方面総監の指揮下に同総監が指揮する陸災部隊、海自横須賀地方総監が指揮する海災部隊および空自航空総隊司令官が指揮する空災部隊を入れた災統合任務部隊を編成し、陸・海・空部隊の統合運用により行方不明者捜索をはじめ、被災者支援のための各種活動を行った。また、福島第一原発の事故にともなう原子力災害派遣においては、陸自中央即応集団司令官の一元的指揮のもと、陸・海・空自の要員約500名が原発構内での放水活動などを行った。これらの活動では、米軍をはじめとする各国軍との協力や、政府各種対策本部、関係省庁、自治体などとの連携を密接に行いながら、全国の各部隊から過去最大規模の人員・装備を動員した。また、訓練以外で初めて自衛隊法に基づく即応予備自衛官および予備自衛官の招集を行って、被災者の安全および生活の安定を確保すべく、まさに自衛隊の総力を挙げて取り組んだ。
自衛隊の派遣規模は、10万人態勢構築の総理指示を受け、3月18日には10万人を超える態勢となり、最大時で約10万7,000人(即応予備自衛官および予備自衛官を含む2)、航空機543機、艦艇54隻に上った。このような態勢のもとで、被災地域を中心とした基地・駐屯地では、派遣部隊の円滑な活動を支援するため、部隊の宿泊などの受入や、不足した食糧・被服・装具類の緊急・大量調達を含む大規模な後方支援業務が行われ、重要な役割を果たした。
(図表III―1―3―1参照)

図表III―1―3―1 東日本大震災における防衛省・自衛隊の態勢

発災から約3か月半を経て、政府・地方自治体などによる被災者生活支援態勢が整いつつあることから7月1日には災統合任務部隊の編成が解かれ、陸災・海災・空災部隊が協同した活動に移行し、大規模震災災害派遣は、8月31日に終結した。なお、原子力災害派遣活動は、7月19日、中央即応集団司令官から陸災部隊指揮官(東北方面総監)に引き継がれた。
11(同23)年12月6日、除染及び特定廃棄物処理に関する関係閣僚会同が開催され、福島第一原発事故で放出された放射性物質により汚染された地域を一日も早く復興させるために除染を速やかに行うことが、政府をあげての喫緊の課題であるとの認識のもと、環境省などの協力を得て、陸自は除染活動を行うこととなった。翌7日から2週間にわたり、12(同24)年1月以降、環境省の直轄事業により開始される本格的な除染活動の拠点となる福島県楢葉町、富岡町、浪江町および飯舘村の役場において、第44普通科連隊および第6特科連隊を主力とする約900人で、側溝の汚泥の除去や落葉の回収、駐車場のアスファルトなど表面の高圧洗浄機による除染などを行い、政府・地方自治体による地域除染のための活動基盤を整備した。
原子力災害派遣については、12月26日をもって終結した。
(図表III―1―3―2・3参照)

図表III―1―3―2 東日本大震災の主要経過概要
図表III―1―3―3 東日本大震災の活動実績

1)大規模震災災害派遣は、大規模震災が発生した場合に、自衛隊法のほか、「自衛隊の災害派遣に関する訓令」(昭和55年防衛庁訓令第28号)第14条に基づき、防衛大臣の命により、方面総監、自衛艦隊司令官、地方総監または航空総隊司令官が災害派遣実施部隊の長となって部隊などを派遣することをいう。
2)東日本大震災では、即応予備自衛官延べ2,210人(実人数1,374人)、予備自衛官延べ496人(実人数317人)を、それぞれ訓練以外で初めて招集し、1〜2週間の招集期間を基本的な単位として活動した。
 
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