東南アジアでは、域内各国の協力関係が進展する一方で、依然として不安定要素も存在している。
カンボジアとタイの間では、プレアビヒア寺院1周辺の国境未画定地域の扱いをめぐり、時折緊張が高まる場面が見られた。両国は、11(平成23)年2月に同地域で発生した武力衝突を受け、同年のASEAN議長国であったインドネシア率いる停戦監視団の派遣に合意したが、同年4月には再び大規模な衝突が発生した。同年7月、国際司法裁判所は、寺院およびその周辺を暫定非武装地帯に設定し、両国部隊の即時撤退を命じる仮保全措置を言い渡した。同年8月のタイのインラック政権発足後は、両国間で首相会談や国境委員会が開催されるなど、両国関係に改善が見られている2。
フィリピンでは、政府とイスラム系反政府勢力のモロ・イスラム解放戦線(MILF:Moro Islamic Liberation Front)が約40年にわたり武力衝突を繰り返してきたが、03(同15)年の停戦合意、04(同16)年からの国際監視団(IMT:International Monitoring Team)の活動により、和平プロセスが進展した。しかし、08(同20)年8月以降、懸案であった土地問題解決をめぐり武力衝突が再び激化し、同年11月末にIMTは活動を中止した。その後、09(同21)年12月に和平交渉を再開、同年2月末にIMT3はミンダナオ島での活動を再開したが、アロヨ前政権下での和平合意は実現しなかった。アキノ政権下においても、11(同23年)3月以降、和平交渉が行われており、今後、ミンダナオ和平の最終合意が早期に達成することが望まれる4。
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