第I部 わが国を取り巻く安全保障環境
3 対外関係など
1 全般

中国は、諸外国との間において、軍高官による相互訪問や合同軍事演習などを含む軍事交流を積極的に展開しており、近年では、米国やロシアをはじめとする大国や東南アジアを含む周辺諸国に加えて、アフリカ諸国や中南米諸国などとの軍事交流も活発に行っている。中国の軍事交流は、国家利益を保護するための戦略的手段として、全体的な外交戦略の枠組のひとつとして位置づけられているとみられる1。中国が軍事交流を推進する目的としては、諸外国との関係強化を通じて中国に対する懸念の払拭に努めつつ、自国に有利な安全保障環境の構築や国際社会における影響力の強化などを図ることや、資源・エネルギーの安定的な確保や海外拠点の構築などがあるものと考えられる。

2 台湾との関係

中国は、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しており、「一つの中国」の原則が、中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。また、中国は、平和的な統一を目指す努力は決して放棄しないとし、台湾人民が関心を寄せている問題を解決し、その正当な権限を守る政策や措置をとっていく旨を表明する一方で、外国勢力による中国統一への干渉や台湾独立を狙う動きに強く反対する立場から、武力行使を放棄していないことをたびたび表明している。05(平成17)年3月に制定された「反国家分裂法」においては、「「台独」分裂勢力(「台湾独立」をめざす分裂勢力)がいかなる名目、いかなる方式であれ台湾を中国から切り離す事実をつくり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生し、または平和的統一の可能性が完全に失われたとき、国は非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全を守ることができる」(同法第8条)と規定されており、武力行使の不放棄が明文化されている。
12(同24)年1月の総統選挙において再選された台湾の馬英九(ば・えいきゅう)総統(国民党)は、二期目も引き続き、中国との経済交流の拡大による台湾経済の発展や、独立よりも現状維持を追求する政策を掲げている2。中台関係は、経済協力枠組取決め(ECFAEconomic Cooperation Framework Agreement)の発効をはじめとして、経済分野を中心に進展している3。一方、安全保障面では、胡錦濤国家主席は、中台が適当な時期に軍事問題にかかる接触・交流を行い、軍事安全保障の相互信頼醸成メカニズムの構築を検討することなどを呼びかけている4のに対して、馬英九総統は、台湾に向けられた人民解放軍のミサイルの撤去などを求めている。軍事問題を含む政治対話の動向を含め、今後の中台関係の動向が注目される。

3 米国との関係

米中間には、中国の人権問題や台湾問題、貿易問題など、種々の懸案が存在している。一方、中国側としては、安定的な米中関係は経済建設を行っていく上で必須であり、今後もその存続を望んでいくものと考えられる。
米国は、世界経済の回復、気候変動、大量破壊兵器の拡散問題などの国際的課題について、中国が国際社会と協力して責任ある主導的な役割を担うことを歓迎するとしている。また、中国の軍事力近代化を注視するとし、米中間に意見の一致しない問題があることを認め、人権問題などについて米国の立場を率直に主張する旨を明らかにする一方、米中間の意見の相違によって両国の利益にかかわる課題についての協力が妨げられるべきではないともしている5
これに対し、中国側は、胡錦濤国家主席が、21世紀における積極的、協力的かつ全面的な米中関係をともに構築する旨を表明しており、幅広い分野での実利的協力を通じて米中関係の安定的発展を重視する姿勢を示している。
米中間では、軍事面での交流も進展し、各種の政策対話が行われてきたほか、米軍の演習へのオブザーバーの派遣、海軍艦艇の相互訪問の機会における共同訓練が行われ、08(同20)年4月には両国の国防当局間にホットラインが開設された。しかしながら、中国は、米中両軍間の関係を発展させることを望みつつも、両軍関係の健全な発展を実現するには、台湾への武器売却、米軍艦艇・航空機による中国の排他的経済水域における活動、両軍交流における法的障害、米側による対中戦略的信頼の欠如といった問題を解決する必要があるとも主張しており6、08(同20)年10月および10(同22)年1月に米国防省が台湾への武器売却を議会に通知した際には、米国との主要な軍事交流の中止を通告するなど、米中間の軍事交流には不安定な側面もみられる7。これに対して、米国は、中国の軍事力の発展や意思決定過程の透明性の欠如などは中国の将来の行動と意図について疑問を抱かせるものであり、米中関係は、信頼を増進し、誤解を減らすプロセスによって下支えする必要があるとしている8。このため米国は、軍事交流においても、問題が生じるたびに軍事交流が中断される状況を改善し、より安定的な意思疎通のチャンネルを維持できる関係の構築を目指すとみられ、近年では、たとえば米中戦略・経済対話において戦略安保対話の創設(11(同23)年5月)などを行っている。

4 ロシアとの関係

89(同元)年にいわゆる中ソ対立に終止符が打たれて以来、中露双方は、継続して両国関係重視の姿勢を見せている。90年代半ばに、両国間で「戦略的パートナーシップ」を確立して以来、同パートナーシップの深化が強調されており、01(同13)年には、中露善隣友好協力条約9が締結されている。04(同16)年には、長年の懸案であった中露国境画定問題も解決されるに至った。両国は、世界の多極化と国際新秩序の構築を推進するとの認識を共有し、近年では、資源・エネルギー供給をはじめとする経済的な動機も良好な中露関係の重要な牽引役となってきている。
軍事面では、中国は、90年代以降、ロシアからSu―27、Su―30戦闘機、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦などの近代的な武器を購入しており、中国にとってロシアは最大の武器供給国であるが、中国の武器国産化の進展などを背景に近年取引額が低下傾向にあるとされている。また、ロシアは、陸上で国境を接する中国に対して自国に脅威が及ぶような特定の高性能武器は供与しないなどの方針を有しているとの指摘や、武器輸出における中国との競合を懸念しつつあるとの指摘もある。
中露間の軍事交流としては、定期的な軍高官などの往来に加え、合同軍事演習を行っており10、中国としては、これらの交流を通じて、両国軍の間の相互理解や信頼醸成を進めることおよび多極化世界の一つの極としての中露の存在を誇示することだけではなく、ロシア製兵器の運用方法やロシア軍の作戦教義などを学習することなどが可能になると考えられる。

5 北朝鮮との関係

北朝鮮は、中国にとって「伝統的友誼」関係にあり、食糧支援やエネルギー供給において多くの割合を中国に依存しているとみられていることなどから、中国は北朝鮮に対し他の国よりも大きな影響力を有すると考えられている。中国には、核問題の解決に向け、積極的な役割を果たすことが国際社会から期待されている11。一方、中国は、10(同22)年3月の哨戒艦沈没事件や同年11月の延坪島砲撃事件に関連して、北朝鮮に対して厳しい対応をとることに慎重な姿勢を示したほか、11(同23)年12月の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の死去に際しては、北朝鮮に対し深い哀悼の意を表するとともに、金正恩(キム・ジョンウン)氏を中心とした新体制を支持する姿勢を迅速に表明するなどしている。このような中国の姿勢については、朝鮮半島情勢が不安定化する可能性をこれまで以上に懸念するとともに、北朝鮮の新体制に対する自らの影響力を確保する意図があると指摘されている。

6 その他の諸国との関係

(1)東南アジア諸国との関係
東南アジア諸国との関係では、引き続き首脳クラスなどの往来が活発であり、中国は、この地域のすべての国との二国間関係の発展を図ってきている。特にミャンマーとは従来から良好な関係を有しており、中国はミャンマーに対して石油や天然ガスのパイプライン建設や港湾、鉄道などの開発を含むインフラ整備を支援しているほか、主要な装備品の供給元となっている。この背景には、ミャンマーは中国にとってインド洋へ最短距離でアクセスする位置にあることも関係しているとの指摘もある12
ASEAN+1(中国)やASEAN+3、ASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組においても中国は積極的な関与を行っている13。中国は、外交の場を利用して、ASEAN諸国との間の経済的、文化的協力関係の深化を進めるとともに、最近では、軍高官の往来や部隊間の交流・協力を含む軍事交流を活発化させるなど、安全保障分野における協力関係を進展させることに積極的である14

(2)中央アジア諸国との関係
中国西部の新疆ウイグル自治区は、中央アジア地域と隣接している。カザフスタン、キルギス、タジキスタンの3か国とは直接国境を接しており、それぞれの国境地帯をまたがって居住する少数民族があり、人的交流も活発である。そのため、中国にとって中央アジア諸国の政治的安定やイスラム過激派によるテロなど治安情勢は大きな関心事項であり、01(同13)年6月に設立された上海協力機構(SCOShanghai Cooperation Organization)への関与は、中国のこのような関心の表れとみられる。また、中国は、資源・エネルギーの供給源や調達方法の多様化などを図るため、中央アジアの豊富な資源・エネルギーに強い関心を有しており、中国・中央アジア間に石油や天然ガスのパイプラインを建設するなど、中央アジア諸国とのエネルギー分野での協力を進めている。

(3)南アジア諸国との関係
中国は、国境紛争などからインドとは対立関係が続いてきたが、インドと対立関係にあるパキスタンとは従来から特に密接な関係を有し、JF―17戦闘機の共同開発を行うなど、武器輸出15や武器技術移転を含む軍事分野での協力関係も進展しているとみられている。一方で、近年、中国は、パキスタンとのバランスにも配慮しつつ、インドとの関係改善にも努めており、積極的な首脳往来を行う中で、インドとの関係を戦略的パートナーシップの関係にあるとし、過去、軍事衝突に至った中印国境画定問題も進展していると表明している。インドとの関係進展の背景には、中印両国における経済成長の重視や米印関係の強化の動きへの対応があるものと考えられる。
軍事交流では、中国とパキスタンやインドとの間で、03(同15)年以降、海軍共同捜索・救難訓練をはじめ、各種の共同訓練が行われている16

(4)EU諸国との関係
近年、中国と欧州連合(EUEuropean Union)諸国との間の貿易の伸びは著しく、中国にとってEUは、特に経済面において、日本、米国と並ぶパートナーとなっている。中国は、外交の場を利用して、EU諸国に対し、89(同元)年の天安門事件以来の対中武器禁輸措置の解除を強く求めてきている17
EU加盟国は、情報通信技術、航空機用電子機器、潜水艦の大気非依存型推進システムなどにおいて中国や中国に武器を輸出しているロシアよりも進んだ軍事技術を保有しており、EUによる対中武器禁輸措置が解除された場合、EU諸国の武器や軍事技術が中国に移転されたり、ロシアとの武器取引を有利にするための交渉材料として用いられたりする可能性がある。このため、わが国からEUに対しては、対中武器禁輸措置の解除に一貫して反対の意を表明してきている。一方、EUは欧州の政府債務危機への対応のため中国に対し資金面での支援を求めており、これを機に中国側が対中武器禁輸措置の解除を求める動きを加速させるとの見方もなされていることから、引き続き今後のEU内の議論に注目していく必要がある。

(5)中東・アフリカ諸国、太平洋島嶼国、中南米諸国との関係
中国は、従来から、インフラ建設支援や資源・エネルギー開発への積極的な投資などを通じて特に経済面において中東・アフリカ諸国との関係強化に努めており、その影響力をさらに拡大させつつある。近年では、首脳クラスのみならず軍高官の往来も活発であるほか、武器輸出や部隊間の交流18なども積極的に行われるようになっている。このような動きの背景には、資源・エネルギーの安定供給を確保する狙いのほか、将来的には海外拠点の確保も念頭においているとの見方がある。
中国は、太平洋島嶼国との関係も強化しており、パプア・ニューギニアにおいて石油、天然ガス、コバルト鉱山などの開発を進めているほか、同国と軍事協力に関する協定を締結している。また、他の島嶼国に対しても積極的かつ継続的な経済援助を行っているほか、フィジーやトンガとの間では軍事交流を進める動きもみられる。
中南米諸国との関係では、アルゼンチンやブラジルをはじめとする各国へ軍高官が継続的に訪問しているほか、中国海軍の病院船による医療サービス任務19を行うなど、中国は中南米諸国との関係強化に努めている。

7 武器の国際的な移転

中国は、アジア、アフリカなどの開発途上国に小型武器、戦車、航空機などを供与しており、パキスタン、イラン、バングラデシュなどが主要な輸出先とされているほか、ナミビア、エジプト、アルジェリア、スーダンなどのアフリカ諸国や、ベネズエラ、ペルーなどの中南米諸国にも武器を輸出している。中国からの武器移転については、友好国との戦略的な関係の強化や国際社会における発言力の拡大のほか、資源・エネルギーの獲得にも関係しているとの指摘がある。また、中国は、民主主義や人権の観点から問題のある国家に武器を供給しているとの指摘もあり、中国が、国際社会の懸念に応えて武器の国際的な移転に関する透明性を向上させていくかが注目される。


1)「2010年中国の国防」では、「中国は全方位の対外軍事関係を発展させ、各国の軍隊との交流や協力を着実に進め、相互信頼・互恵の軍事的安全環境を整えるよう努めている」とされている。また、銭利華国防部外事弁公室主任は、諸外国との各種交流を含む軍事外交の役割について、国家主権、安全保障、発展利益を保持するための戦略的手段であり、中国が発展する良好な外部環境を醸成するための独特な役割を発揮するもの、と指摘している。
2)12(平成24)年1月の台湾総統選挙は、現職の馬英九総統と蔡英文(さい・えいぶん)・民進党主席との事実上の一騎打ちとなり、約51.6%の得票率で馬総統が再選した。同日の立法委員選挙では、国民党が選挙前から議席を減らしたものの過半数を確保した。選挙結果に関する一部世論調査では、馬総統の掲げる対中政策が支持されたことが主な勝因と指摘されており、特に経済面で安定した中台関係の継続が期待されたものとみられている。一方で、中国側は、選挙結果について、現行の平和発展路線の正しさを証明したものとして、評価する姿勢を示している。
3)最近では、08(平成20)年6月に両岸の実務協議窓口機関(中国側は海峡両岸関係協会、台湾側は海峡交流基金会)のトップ会談が10年ぶりに開催されたほか、同年12月には、中台間の直航旅客チャーター便の平日運航、海運直航および郵便直航が開始された。また、10(同22)年6月には、両岸の自由貿易協定に相当する経済協力枠組取決め(ECFA:Economic Cooperation Framework Agreement)が締結され、台湾の対中投資や輸出額は増加傾向にあるとされている。
4)08(平成20)年12月31日に行われた、「台湾同胞に告げる書」30周年記念座談会における談話。なお、「2010年中国の国防」においても、両岸は、「適当な時期に軍事問題に関する接触と交流を行い、軍事安全保障の相互信頼メカニズムの構築という課題について検討することができる」と強調している。
5)米国「国家安全保障戦略」(10(平成22)年5月)。また、12(同24)年1月の国防戦略指針は、「中国の台頭は米国の経済・安全保障に様々な形での潜在的な影響を持つ」とし、「米中両国は、東アジアにおける平和と安定に強い利害関心を有しており、協力的な二国関係の構築に関心を持つ」としている。
6)ゲイツ米国防長官(当時)との会談における徐才厚中央軍事委員会副主席の発言(09(平成21)年10月)。また、馬暁天副総参謀長は、10(同22)年12月に開催された第11回米中防衛協議の場において、「米側による対台湾武器売却、議会による両軍交流を制限する関連法および米国艦艇・航空機の中国の排他的経済水域における頻繁な偵察は、両軍関係を発展させる上での主な障害である」と発言している。
7)11(平成23)年1月、ゲイツ米国防長官(当時)は、07年(同19)年11月以来2回目となる訪中を行い、梁光烈国防部長と会談、10(同22)年1月以降中断されていたハイレベル相互訪問をはじめとする米中軍事交流の本格的な再開で合意した。11(同23)年5月には陳炳徳総参謀長が米国を公式訪問したほか、同年7月にはマレン米統合参謀本部議長(当時)が訪中して陳炳徳総参謀長と会談し、ソマリア沖・アデン湾において共同訓練を行うなどの実務的な協力を推進していくことが確認されている。その後も、バイデン米副大統領の訪中(同年8月)を受け入れたほか、米空母の香港寄港(同年8月)が実現している。同年9月に米国防省が台湾への武器売却を議会に通知した際、中国は米国の姿勢を強く批判したほか、ソマリア沖・アデン湾における共同訓練などを延期したものの、対米関係の安定化に努める姿勢は継続させており、12(同24)年2月には習近平国家副主席が訪米しオバマ大統領と会談したほか、同年5月には梁光烈国防部長が訪米しパネッタ国防長官と会談するなど、軍事交流を含む両国関係の重要性が確認されている。
8)米国「4年ごとの国防計画見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)(10(平成22)年2月)。また、12(同24)年1月の国防戦略指針も、地域における摩擦を回避するため、「中国の軍事力の成長は、その戦略的意図に関するより高い透明性を伴ったものでなければならない」と指摘している。
9)同条約は、軍事面において、国境地域の軍事分野における信頼醸成と相互兵力削減の強化、軍事技術協力などの軍事協力、平和への脅威などを認識した場合の協議の実施などに言及している。
10)中露間では、05(平成17)年8月に初めての大規模な合同軍事演習が中国の山東半島などで行われた。また、07(同19)年8月、09(同21)年7月、10(同22)年9月および12(同24)年6月には、SCO加盟国による対テロ作戦を内容とする合同演習が行われた。さらに、12(同24)年4月には、中露両国の海軍による大規模な合同軍事演習「海上協力2012」が黄海で行われた。なお、SCOは、地域の平和や安定の維持、テロへの共同対処、政治・貿易・経済といった共通利益分野での協力などを目的にしており、対テロ合同演習「平和の使命」を行っているほか、12(同24)年6月のSCO首脳会議においてアフガニスタンをSCOのオブザーバー国として承認するなど、アフガニスタンを含む中央アジアの情勢の安定に向けた努力も行っている。
11)中国は、03(平成15)年以来、北京で開催されてきた六者会合で議長役を務めているほか、06(同18)年の北朝鮮による核実験実施発表の際に北朝鮮に制裁措置を課した国連安保理決議第1718号や、09(同21)年5月の2回目の核実験実施発表を受けて北朝鮮に対する追加的な措置を決定した国連安保理決議第1874号などに賛成している。一方、北朝鮮が米国との交渉を重視しているとみられること、また中国は周辺地域の情勢が不安定化して国内に波及することを懸念して強硬な手段を講じることを逡巡すると考えられることから、中国の北朝鮮に対する影響力には一定の限度があるとの見方もある。
12)ミャンマーは、外交姿勢について、対中依存からの脱却を図りつつあるとみる向きもある。
13)7(平成9)年にASEAN・中国首脳会議を初めて開催している。
14)中国と東南アジア諸国との間の軍事交流として、最近では、中国とシンガポールの陸軍が09(平成21)年6月および10(同22)年11月に行った対テロ共同訓練、中国とタイの陸軍が07(同19)年7月、08(同20)年9月および10(同21)年10月に行った対テロ共同訓練、06(同18)年以降毎年トンキン湾で中国とベトナムの海軍艦艇が行っている共同パトロール、10(同22)年10月から11月にかけて、中国海軍陸戦隊とタイ海軍特殊部隊と行った共同訓練「藍色突撃2010」などがある。また、07(同19)年には中国からの援助としてカンボジアへ哨戒艇などが供与されたほか、08(同20)年には東ティモールへの哨戒艇2隻の売却契約が結ばれたと伝えられている。インドネシアとの間では、11(同23)年3月に馬暁天副総参謀長がインドネシアを訪問しプルノモ国防相と会談、中国製対艦ミサイルの共同生産などを含む軍事技術協力に関する覚書に署名したほか、同年6月には両軍間で初めてとなる対テロ共同訓練「利刃2011」を行っている。このほか、タイとの間では、12(同24)年4月にタイの国防大臣をはじめとする軍事代表団が中国を訪問し、新型多連装ロケットの共同開発を進めることで合意している。
15)ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)「2011年版年鑑」によれば、06(平成18)年から10(同22)年における中国の武器輸出額のうち、約53%をパキスタンが占めており、中国にとっての最大の武器輸出先となっている。
16)07(平成19)年12月には、62(昭和37)年の中印国境紛争以来初の両国陸軍部隊による対テロ共同訓練「携手2007」が行われたほか、11(平成23)年9月には、両国の閣僚級が参加する初めての戦略対話が行われた。一方、パキスタンとの間では、11(同23)年3月に両国の空軍が参加した共同訓練「雄鷹−1」が行われたほか、同年11月には、両国の特殊部隊などが参加した対テロ共同訓練「友誼2011」が行われた。さらに、同年5月には、パキスタンのムクタール国防大臣が、同国のグワダル港への海軍基地建設を中国側に要請したと伝えられている。
17)たとえば、10(平成22)年11月には胡錦濤国家主席が訪仏し、中仏双方が対中武器禁輸措置の解除を支持する旨を盛り込んだ共同声明を発表するなど、EU内の一部には対中武器禁輸の解除に前向きな姿勢を示す国もあるとみられる。
18)たとえば、10(平成22)年9月から10月にかけて、トルコとの間で初の空軍共同訓練を行った。アフリカ諸国との関係では、10(同22)年に中国海軍の病院船がジブチやセーシェルなどを訪問し医療サービスの提供を行ったとされるほか、11(同23)年12月に梁光烈国防部長がセーシェルを訪問するなどしており、中国海軍艦艇への補給や港湾利用などで協力していくものとみられている。
19)中国海軍の病院船の活動については脚注2―33および脚注2―58を参照。このほか、10(平成22)年11月には、ペルーとの間で初の合同医療救 援訓練「平和の天使2010」を行っている。
 
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