核戦力を含む戦略攻撃兵器については、米国は11(平成23)年2月に発効した新戦略兵器削減条約に基づく削減を進めており、12(同24)年4月、現在の配備戦略弾頭1は1,737発、配備運搬手段は812基・機であると公表した2。
米国はさらに、核兵器への依存を低減させる能力の一つとして、「通常兵器による迅速なグローバル打撃」(CPGS:Conventional Prompt Global Strike)構想を研究している。同構想は、世界のいかなる場所に所在する目標に対しても、命中精度の高い非核兵器によって、敵のアクセス拒否(A2)能力を突破して迅速な打撃を与えようとするものである3。
ミサイル防衛(MD:Missile Defense)については、オバマ政権は、イランの短・中距離弾道ミサイルの脅威が予測よりも急速に進展している一方、同国の大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)の開発は予測よりも遅延していることや、迎撃ミサイルやセンサーといったミサイル防衛に関する能力と技術が顕著に向上していることを踏まえ、11(同23)年頃から20(同32)年頃までに欧州におけるMD能力を段階的に向上させ、最終的にはICBMにも対応する包括的なMD体制を構築するという計画を進めている4。
米国は10(同22)年2月に「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR:Ballistic Missile Defense Review)を公表し、米国本土の防衛については地上配備型迎撃ミサイルにより北朝鮮やイランのICBMに対処するとし、他の地域の防衛については、MDシステムへの投資を拡大しつつ、同盟国との協力と負担の適切な共有のもと、それぞれの地域に応じてMD能力を段階的に向上させるアプローチ(PAA:Phased Adaptive Approach)をとっていくとしていたが、12(同24)年1月には、米国本土および欧州におけるMDプログラムのための投資を継続する一方、地域における配備可能なMDシステムのための支出を削減し、将来的に、同盟国およびパートナー国への依存を増加することを表明している。
陸上戦力は、陸軍約56万人、海兵隊約20万人を擁し、ドイツ、韓国、日本などに戦力を前方展開している。陸軍は、国防戦略指針にも記述されているとおり、より小規模ながらも、世界中においてあらゆる種類の作戦を実施できる態勢にある戦力の構築に向けた取組を行っている。海兵隊は、より小規模な部隊である特殊部隊と、より大規模な部隊である重武装の通常部隊との間をつなぐ「中量級」の部隊として、あらゆる脅威に対処することが可能な戦力の獲得を目指している。なお、国防省は12(同24)年1月、将来的に陸軍人員を49万人に、海兵隊人員を18.2万人にそれぞれ削減することを発表した。
海上戦力は、艦艇約1,080隻(うち潜水艦約70隻)約640万トンの勢力を擁し、東大西洋、地中海およびアフリカに第6艦隊、ペルシャ湾、紅海および北西インド洋に第5艦隊、東太平洋に第3艦隊、南米とカリブ海に第4艦隊、西太平洋とインド洋に第7艦隊を展開している。QDRは、海軍は前方展開による強力なプレゼンスと戦力の展開能力を引き続き保つとしている。
航空戦力は、空軍、海軍と海兵隊を合わせて作戦機約3,500機を擁し、空母艦載機を洋上に展開するほか、ドイツ、英国、日本や韓国に戦術航空戦力の一部を前方展開している。QDRは、第5世代戦闘機の増加によって空軍の生存能力がさらに向上するとしているほか、パートナー国の治安部隊への支援作戦を強化するとしている。
さらに、サイバー空間での脅威の増大に対処するため、サイバー空間における作戦を統括するサイバーコマンドを創設した。サイバーコマンドは10(同22)年5月に初期運用を開始、同年11月に本格運用を開始した5。
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