第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

4 広報活動や情報公開など
わが国の平和と安全を守る防衛省・自衛隊の活動は、国民一人ひとりの防衛省・自衛隊に対する理解と支持があって初めて成り立つものである。このため、防衛省・自衛隊では、国民の関心の高まりや国民への説明責任といった観点から、積極的な広報1を行うなど、国民への情報の提供に努めてきたところである2

1 さまざまな広報活動
ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動、ハイチ共和国における国際連合ハイチ安定化ミッションや国際緊急援助活動をはじめとする国際平和協力活動、災害派遣など、国内外での自衛隊の活動の場の広がりにともない、国民の自衛隊や防衛問題に対して高い関心が寄せられている。
防衛省・自衛隊は、平素から防衛政策や自衛隊の活動を積極的に広報する必要があるとの認識のもと、さまざまな広報活動を通して、国民の意識やニーズの変化、海外における防衛省・自衛隊の活動の活発化を踏まえつつ、自衛隊の実態がより理解されるよう努めている。
参照資料85

(1)ホームページ、パンフレットなど
防衛省・自衛隊は、インターネットによる情報提供・意見聴取、広報ビデオの配信、各自衛隊の広報コマーシャル・フィルムの放映を行うなど、各種メディアを活用した広報に取り組んでいる。
また、防衛省の政策や自衛隊の活動などを説明したさまざまなパンフレットの作成や配布、報道機関への取材協力、広報誌『MAMOR(マモル)』への編集協力など、自衛隊や防衛に関する正確な情報を、より広く一般の国民へ提供するよう努めている。さらに、自衛隊の海外における活動の活発化にともない、海外からの防衛省・自衛隊への関心が高まっており、英文広報パンフレット『Japan Defense Focus』を年4回発行するほか、記者会見への海外メディアの参加推進、防衛省ホームページの英文サイトの充実、英語版防衛白書、各種政策パンフレット・広報ビデオの英語版を作成するなど、海外に向けて情報を発信するための取組も行っている。
このような取組の中、特に国民的関心の高いソマリア沖・アデン湾における海賊対処、ハイチ国際平和協力業務および東日本大震災への対応などについては防衛省および統合幕僚監部ホームページに特集ページを設けて活動実績や動画を掲載しているほか、広報誌による特集、パンフレットの製作・配布により、重点的な広報を展開している。
 
『Japan Defense Focus』
『Japan Defense Focus』

(2)イベント・広報施設など
防衛省・自衛隊は、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている3。この活動には、毎年富士山麓で行われる陸自の富士総合火力演習や、各地での海自の艦艇による体験航海、空自の基地航空祭での航空機による展示飛行や体験搭乗などがある。また、全国に所在する駐屯地や基地では、部隊の創立記念日などに、装備品の展示や部隊見学、音楽隊によるコンサートなどを行うとともに、地元の協力を得て、市中での徒歩、車両によるパレードを行っている例もある。さらに、自衛隊記念日記念行事として、自衛隊音楽まつりや観閲式、観艦式、航空観閲式などを行っている。10(平成22)年は、自衛隊音楽まつりを日本武道館で開催し、のべ約3万7,000人が来場した。
 
創隊記念行事
創隊記念行事
 
体験航海
体験航海
 
航空祭におけるブルーインパルス
航空祭におけるブルーインパルス
 
平成22年度自衛隊音楽まつり
平成22年度自衛隊音楽まつり
 
平成22年度観閲式
平成22年度観閲式

また、陸・海・空自が交互に主担当となって観閲式、観艦式、航空観閲式を行い、自衛隊の装備や訓練の成果を国民に紹介しており、10(同22)年は陸自が朝霞駐屯地において観閲式を実施し、予行を含め約4万3,000人が来場した。なお、11(同23)年は空自による航空観閲式を計画している。
また、各地方防衛局では、新防衛大綱や新中期防などの防衛政策や自衛隊の活動に関し、国民の理解を得るための防衛問題セミナーを開催しているほか、在日米軍施設・区域周辺の住民と米軍関係者やその家族とがスポーツや文化を通じて交流する日米交流事業を実施している。
このほか広報施設見学にも積極的に取り組んでいる。たとえば、防衛省は、市ヶ谷地区内の施設を誰でも見学できるよう、平日の午前・午後の1日2回、ツアー形式により公開しており、00(平成12)年6月のツアー開始以降、これまで約27万人の見学者が訪れている。
 
市ヶ谷台ツアーの様子
市ヶ谷台ツアーの様子
 
市ヶ谷台ツアーの様子
市ヶ谷台ツアーの様子

また、各自衛隊は、大規模広報施設を設けているほか、全国の駐屯地や基地の広報館や史料館も公開している。
参照 巻末資料

なお、09(同21)年11月の事業仕分けにおいて、自衛隊の広報事業(大規模広報施設、行事)について、「予算を縮減(入場料の徴収を含め民間委託)」という評価結果が出たことを踏まえ、入場料の徴収にともなう入場者数の変化などの影響について検証することを目的として、10(同22)年11月から11(同23)年1月にかけて、大規模広報施設(陸上自衛隊広報センター、海上自衛隊佐世保史料館、航空自衛隊浜松広報館)にて、入場料を徴収する実験を行った。その後、当該実験結果を検証し、維持運営にかかる経費軽減のための、民間との連携をふまえた適切な施策を検討しているところであり、23年度予算については、一部の展示器材にかかる維持整備費を計上していない。

(3)隊内生活体験
防衛省・自衛隊は、自衛隊生活体験ツアー4や、民間企業などからの依頼を受けて体験入隊5を行っている。これらは、自衛隊の駐屯地や基地に2〜3日間宿泊するなど、隊員と同様の日課で自衛隊の生活や訓練を体験するとともに、隊員とじかに接することにより、自衛隊に対する理解を一層深めるものである。平成22年度は各種自衛隊生活体験ツアーに約200人が参加した。企業などからは約1,200件の体験入隊の依頼を受け、約3万1,400人が隊内生活を体験した。
 
生活体験ツアーの様子
生活体験ツアーの様子
 
生活体験ツアーの様子
生活体験ツアーの様子

2 情報公開制度・個人情報保護制度の適切な運用
防衛省では、01(同13)年の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の施行にともない、情報公開制度6を整備し、防衛省が保有する行政文書を開示している。
さらに、05(同17)年の「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」の施行にともない、個人情報保護制度7を整備し、防衛省が保有する個人情報の安全確保などの措置を講ずるとともに、開示、訂正および利用停止請求に対して、保有個人情報の開示などを行っている。
このため、防衛省本省および各地方防衛局・同支局において、開示請求書などの受付や開示の実施などの業務を行っている8
参照 資料86、巻末資料

3 公益通報者保護制度の適切な運用
公益通報者保護法が06(同18)年4月から施行されたことにともない、防衛省では、内部の職員などからの公益通報を処理する制度と防衛省が処分や勧告などをする法的権限を有する事項に関する外部の労働者からの公益通報を処理する制度を整備するとともに、内部の職員などからの公益通報に関する内部窓口や外部の労働者からの公益通報に関する外部窓口をそれぞれ設置し、公益通報の処理および公益通報者の保護などを行っている9

4 政策評価への取組
01(同13)年、国民本位の効率的で質の高い行政の実現を目的に、政策評価制度が導入され、02(同14)年には、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が施行された。
これに基づき、防衛省は、各種施策について評価を行っており、平成22年度には「多国間共同訓練について」をはじめ53件の政策評価を行った。
また、新防衛大綱が閣議決定されたことを踏まえ、11(同23)年3月に新たな「防衛省における政策評価に関する基本計画」を策定し、新防衛大綱における「わが国の安全保障の目標を達成するため、わが国自身の努力、同盟国との協力、アジア太平洋地域における協力、グローバルな協力等多層的な安全保障協力を総合的に推進する。」という目標を達成するための各種施策について評価を行っている10


 
1)<http://www.mod.go.jp/j/publication/index.html>参照

 
2)安全保障上の観点などから公開にふさわしくない情報(・部隊運用に支障をきたすおそれがある情報、・関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある情報、・個人に関する情報など)もあるものの、引き続き国民の理解に資するよう可能な限りの情報開示に努める方針。

 
3)イベントなどの細部については、防衛省ホームページ<http://www.mod.go.jp/j/publication/events/index.html>参照。

 
4)「大学生等を対象としたサマーツアー・スプリングツアー」、「パセリちゃんツアー」、「女性のための自衛隊1日見学」の公募を防衛省・自衛隊ホームページで行っている。

 
5)陸上・海上・航空自衛隊の生活を体験するツアー。
体験入隊については、自衛隊地方協力本部が窓口となって実施している。自衛隊地方協力本部の連絡先については、<http://www.mod.go.jp/profile/plo/plo.html>参照

 
6)<http://www.mod.go.jp/j/proceed/joho/index.html>参照

 
7)<http://www.mod.go.jp/j/proceed/hogo/index.html>参照

 
8)<http://www.mod.go.jp/j/proceed/joho/johokokai06.pdf>参照

 
9)<http://www.mod.go.jp/j/proceed/koueki_tuho/index.html>参照

 
10)<http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/index.html>参照6


 

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