3 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策
1 防衛施設の規模と特徴
防衛施設は、演習場、飛行場、港湾、営舎など用途が多岐にわたり、広大な土地を必要とするものが多い
1。また、わが国の地理的特性から、狭い平野部に都市や諸産業施設と防衛施設が競合して存在している場合もある。特に、経済発展の過程で多くの防衛施設の周辺地域で都市化が進んだ結果、防衛施設の設置・運用が制約されるという問題が生じている。また、航空機の頻繁な離着陸や射撃・爆撃、火砲による射撃、戦車の走行などの行為が、周辺地域の生活環境に騒音などの影響を及ぼすという問題もある。
(図表III-4-3-1・2参照)
2 防衛施設をめぐる各種施設への取組
防衛施設は、わが国の防衛力と日米安全保障体制を支える基盤として、わが国の安全保障に欠くことのできないものである。その機能を十分に発揮させるためには、防衛施設と周辺地域との調和を図り、周辺住民の理解と協力を得て、常に安定して使用できる状態に維持することが必要である。このため防衛省は、74(昭和49)年来、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」(環境整備法)などに基づき、図表III-4-3-3で示す「防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策」を行ってきたところである。
参照
資料84
(1)環境整備法の施策の見直し
環境整備法は、前述したような自衛隊や米軍の行為あるいは飛行場をはじめとする防衛施設の設置・運用による航空機騒音などの障害について、これを放置し、防衛施設の周辺地域の住民にのみ不利益を受忍させることは公平に反するとの観点や、関係地方公共団体などから、こうした障害に対し十分な施策を講じるよう強く要望されたことなどを踏まえ、74(同49)年6月に制定されたものである。防衛省は同法に基づき、こうした障害の防止、軽減、緩和などの措置を講じてきた。
しかしながら、環境整備法の施行から30年以上経過し、社会情勢の変化や国民の生活様式ないし価値観の多様化などを背景として、関係地方公共団体などからは、同法に基づく特定防衛施設周辺整備調整交付金や民生安定施設の助成などについて、より幅の広い弾力的な運用ができるように現行制度の見直しを要望されるとともに、住宅防音工事の充実などについて要望されるようになった。
一方、09(平成21)年11月の行政刷新会議においても、特定防衛施設周辺整備調整交付金や民生安定施設の助成について「使途をより自由にして、地域が自由に使いやすくすることで効果を高めるよう見直しを行う」旨の指摘がなされ、また、住宅防音工事について、できる限り優先して実施すべきとの指摘がなされた。
このような状況の中、防衛省として、まずは環境整備法に基づく特定防衛施設周辺整備調整交付金について、従来の公共用の施設の整備に加え、医療費の助成などのいわゆるソフト事業への交付が可能となるよう現行制度を見直し、関係地方公共団体にとってより使い勝手のよい、より効果的な措置とするため、10(同22)年2月、同法の一部改正法案を第174回国会に提出し、11(同23)年4月、第177回国会において成立し、同月27日、施行した。
(図表III-4-3-4参照)
(2)今後の防衛施設と周辺地域との調和を図るための検討
防衛省としては、防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策のあり方について、関係地方公共団体などからの要望や行政刷新会議の指摘などを踏まえ、厳しい財政事情を勘案し、より実態に即した効果的かつ効率的なものとなるよう十分検討することとしている。
(図表III-4-3-3・4・5・6・7参照)
1)防衛施設の土地面積は、11(平成23)年1月1日現在、約1,400平方キロメートル自衛隊施設の土地面積(約1,087平方キロメートル)と在日米軍施設・区域(専用施設)の土地面積(約310平方キロメートル)と地位協定により在日米軍が共同使用している自衛隊施設以外の施設の土地面積(約4平方キロメートル)を合計した土地面積)であり、国土面積の約0.37%を占める。このうち、自衛隊施設の土地面積の約42%が北海道に所在する。また、用途別では、演習場が全体の約75%を占める。一方、在日米軍施設・区域(専用施設)の土地面積のうち約76平方キロメートルは、地位協定により、自衛隊が共同使用している。