第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

3 防衛省・自衛隊の職員の募集・採用
防衛省・自衛隊が各種任務を遂行するためには、質の高い人材を確保することが必須の条件であり、さまざまな制度を設けて職員の募集・採用を行っている1
参照 資料71

1 募集
わが国の防衛という自衛隊の任務の特性上、自衛隊に興味を持つ者、または自衛官になりたいと思う者に対し、国の防衛の担い手という役割、業務や訓練、特殊な生活環境(営内生活等)などを詳細に説明した上で、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を、広く全国から募る必要がある。このため、防衛省・自衛隊は、全国50か所(北海道に4か所、各都府県に1か所)に自衛隊地方協力本部を置き、陸・海・空自衛隊(陸・海・空自)で部隊勤務経験のある自衛官を広報官として配置し、志願者個々のニーズに対応するとともに、職場としての自衛隊に対する学校関係者の理解と、募集相談員などの協力を得ながら、より質の高い隊員を確保するための募集活動を行っている。
また、地方公共団体は、自衛官の募集事務の一部を行うこととされており、防衛省は、そのための経費を地方公共団体に配分している。今後、少子化などにより、募集環境はますます厳しくなることが予想されていることから、地域に密着したこれら地方公共団体、関係機関などによる募集協力が不可欠である。
 
地方協力本部による募集活動の様子
地方協力本部による募集活動の様子

2 採用
(1)自衛官
自衛官は、志願制度(個人の自由意志に基づく入隊)のもと、さまざまな区分に応じて募集される。採用直後から自衛官の身分を付与されるのは、幹部候補生、一般曹候補生2などであり、入隊直後の教育期間中は自衛官としての身分を持たず教育訓練に専念し、教育修了後に自衛官として任官するのは、自衛官候補生3、防衛大学校学生、高等工科学校生徒4などである。このうち、高等工科学校生徒は、従来の陸上自衛隊生徒にかわり、高機能化・システム化された装備品を駆使・運用するとともに、国際社会において自信をもって対応できる自衛官となる者を養成するために、中学校卒業予定者を対象に採用する制度である。
 
入隊式の様子
入隊式の様子

自衛官は、その職務の特殊性のため、一般の公務員とは異なる5人事管理を行っている。その中でも、一般の公務員と比べて大きく異なる点は、自衛隊の精強さを保つため、「若年(じゃくねん)定年制」と、2年または3年という期間を区切って採用する「任期制」という制度をとっている点である。採用後、各自衛隊に入隊した自衛官は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育を受け、その間において一人ひとりの希望や適性などに応じた職種が決定され、その後全国の部隊などへ赴任する。
防衛省では、「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(07大綱)に基づき、自衛官定数を縮減する中で、熟練性・専門性を重視して「曹」「幹部」の定数を増加させ、「士」の定数を削減してきた。さらに、任期制自衛官の採用・再就職環境が厳しくなったことも考慮し、「非任期制自衛官」(一般曹候補生など)の採用拡大や、士から曹への昇任数確保などが図られ、実員面でも、幹部・曹の充足水準は高い一方で、士は低い充足水準にとどまっている。
この結果、士、特に任期制士が減少し、士は若年者が多いため、その減少により結果として自衛隊全体として年齢構成が高齢化したことから、10(同22)年12月に策定した「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(新防衛大綱)および「中期防衛力整備計画(平成23年度〜平成27年度)」(新中期防)においては、自衛隊の人的構成について、幹部および准曹の構成比率を引き下げ、体力要素の重要性が高い第一線部隊を中心として、若年の士を増強することとしている。
なお、「士」の採用は、平成元年度の約2万3,000人から平成22年度の約9,600人へと減少する一方、「士」に占める「非任期制」自衛官の割合は平成元年度の6%から平成22年度には55%へと変化している。
(図表III-4-1-4参照)
参照 資料72〜75

 
図表III-4-1-4 自衛官採用者数推移[任期、非任期制別]

(2)即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補
ア 予備の要員を確保する意義
自衛官は、有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要量を早急に満たさなければならない。この所要量を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では即応予備自衛官、予備自衛官および予備自衛官補6の三つの制度を設けている7。中でも、自衛官未経験者を対象とする予備自衛官補制度は、防衛基盤の育成・拡大を図り、予備自衛官を安定的に確保し、医療、語学などにおける民間の優れた専門技術を有効活用することを目的として制度化されたものである。この制度には、一般と技能の二つの採用区分があり、技能の採用区分では、医療従事者、語学、情報処理などの技能資格者を採用している。
予備自衛官補は、自衛官として勤務するために必要な教育や訓練を修了した後、予備自衛官として任用されるが、近年では、医療従事者の資格で採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、医官として統合防災訓練に参加したり、語学の資格により採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、通訳として日米共同方面隊指揮所演習に参加するなど、各分野で活躍している。
参照 資料76

イ 即応予備自衛官制度
陸上自衛隊に導入されている即応予備自衛官は、防衛力の基本的な枠組の一部として、防衛招集命令、国民保護等招集命令、治安招集命令、災害等招集命令を受けて自衛官となり、あらかじめ指定された第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務に就くこととなっている。
即応予備自衛官は、退職した自衛官の志願に基づき選考により採用され、平素は社会人として各々の職業に従事しつつ、必要とされる練度を維持するため、指定された部隊で年間30日の訓練招集に参加している。

ウ 予備自衛官制度
予備自衛官は、防衛招集命令、国民保護等招集命令、災害招集命令を受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務に就くこととなっている。
予備自衛官は、退職した自衛官の志願に基づき選考により採用される場合と、予備自衛官補としての教育訓練のすべてを修了した後に任用される場合があり、平素は社会人として各々の職業に従事しつつ、現在は年間5日間の訓練招集に参加して、練度の維持に努めている。

エ 予備自衛官補制度
自衛官未経験者を対象とする予備自衛官補制度は、防衛基盤の育成・拡大を図り、予備自衛官を安定的に確保し、医療、語学などにおける民間の優れた専門技術を有効活用することを目的として制度化されたものである。この制度には、一般と技能の二つの採用区分があり、技能の採用区分では、医療従事者、語学、情報処理などの技能資格者を採用している。
予備自衛官補は、自衛官として勤務するために必要な教育や訓練を修了した後、予備自衛官として任用されるが、近年では、医療従事者の資格で採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、医官として統合防災訓練に参加したり、語学の資格により採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、通訳として日米共同方面隊指揮所演習に参加するなど、各分野で活躍している。

オ 雇用企業の協力
予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などに就いているため、必要な技能のレベルを維持するには仕事のスケジュールを調整し、もしくは休暇などを利用して、訓練招集や教育訓練招集に応じる必要がある。したがって、これらの制度を円滑に運用するためには、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。特に、即応予備自衛官については、年間30日の訓練が必要なため、雇用企業に対して休暇取得に対する配慮など、必要な協力を求めることになる。
このため防衛省は、即応予備自衛官を雇用する企業などの負担を軽減するとともに、即応予備自衛官が安心して訓練に参加できるよう、訓練参加などのために必要な措置を行っている雇用企業などに対し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。

(3)事務官、技官、教官など
防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万2,000名の事務官、技官、教官などが隊員として勤務している。これらの隊員は、主に国家公務員採用I種8、防衛省職員採用I種、II種、III種試験の合格者から採用され、I・II種採用者は共通の研修を受けたうえで、さまざまな分野で業務を行っている。
事務官は、内部部局での防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・研究、全国各地の部隊や地方防衛局での行政事務(予算、渉外、基地対策など)に従事している。
 
勤務中の事務官
勤務中の事務官

技官は、各種の防衛施設(司令部庁舎、滑走路、弾薬庫など)の建設工事、戦闘機や艦艇に代表されるさまざまな装備の研究開発、効率的な調達の追求などで重要な役割を果たしている。
教官は、防衛研究所や防衛大学校、防衛医科大学校などで、防衛に関する高度な研究や隊員への質の高い教育を行っている。
技官および教官で、11(平成23)年3月末において、博士号を取得している者は659名である。
なお、これらの事務官などが中心となって職務に従事している防衛省の各機関においても、自衛官としての知識が必要な部門では、事務官などとともに陸上・海上・航空自衛官が各種業務に従事している。


 
1)自衛官の募集については<http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/>参照
採用情報については<http://www.mod.go.jp/j/saiyou/>参照

 
2)最初から定年制の「曹」に昇進する前提で採用される「士」のこと。18歳以上27歳未満(一般曹候補学生については24歳未満)の者を曹候補者である自衛官に採用する制度として、平成18年度までに「一般曹候補学生」および「曹候補士」の二つの制度を設けていたが、一般曹候補学生制度の長所である曹候補者としての自覚の醸成という視点をいかしながら、曹候補士制度の長所である個人の能力に応じた昇任管理を採り入れた新たな任用制度として、両制度を整理・一本化し、平成19年度の募集から「一般曹候補生」として採用している。

 
3)自衛官として任官する前に、必要な使命感、責任感、団結心、規律心、法令遵守精神などの心構えを十分にかん養する教育を行うため、「自衛官候補生」として採用し、当該教育を修了した後、2等陸・海・空士である自衛官に任用する、10(平成22)年7月より施行された制度である。

 
4)平成23年度の採用から、従来の一般試験に加えて、中学校校長などの推薦を受けた者の中から、高等工科学校生徒として相応しい者を選抜する推薦試験制度を導入した。細部は<http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/recruit/10.html>参照

 
5)自衛隊員は、自衛隊法に定められた防衛出動などの任務にあたる必要があることから、国家公務員法第2条で特別職の国家公務員と位置づけられ、一般職公務員とは独立した人事管理が行われている。

 
6)<http://www.mod.go.jp/j/saiyou/yobiji/index.html>参照

 
7)諸外国でも、予備役制度を設けている。

 
8)従来、事務系職員のみを国家公務員採用・種試験から採用していたが、10(平成22)年4月採用者から、技術系職員のうち主として行政事務に従事することとなっている職員についても、国家公務員採用・種試験より採用することとした。その結果、防衛省職員・種試験は、主として研究業務に従事する職員を採用するための試験となった。


 

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