第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

4 国際テロ対応のための活動

1 国際社会の取組
01(平成13)年の9.11テロ以降、国際社会は、軍事のみならず、外交、警察・司法、情報、金融などのさまざまな分野においてテロに対する取組を続けてきた。しかしながら、テロの脅威は依然として存在しており、国際社会は一致してテロ撲滅のための取組を続けている。
中でも、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯には、アルカイダなどの活動拠点が存在しているといわれ、また、アフガニスタンが依然としてテロリストの資金源となる麻薬の生産拠点にもなっていることから、こうした地域において、米国をはじめとする各国は、アルカイダやタリバーン勢力の掃討作戦(「不朽の自由」作戦(OEF:Operation Enduring Freedom))に部隊などを派遣し、テロを撲滅する活動を行うほか、多くの国が国際治安支援部隊(ISAF:International Security Assistance Force)に参加1し、アフガニスタンの治安維持・復興支援活動を行っている。アフガニスタンの安定と復興には、同国が十分な治安維持能力を有することが不可欠であることから、現在アフガニスタン国軍も含めた治安機関の人材育成が重要な課題の一つとなっている。このため、米国およびNATOは、現在、これを最重要課題の一つとして、重点的に実施している。

2 わが国の取組
国際テロはグローバルな脅威であり、その防止と根絶のため、わが国としても国際社会と協調しつつ適切に取り組んでいくことは重要である。このような観点から、わが国は、テロ対策の強化のため、さまざまな分野での取組2を行ってきている。こうした取組の一つとして、01(同13)年12月以降、旧テロ対策特措法(同法の失効後は旧補給支援特措法)に基づき、海自はインド洋において、途中の中断をはさみながらも、米国、英国、フランス、ドイツなどのほか、イスラム教国であるパキスタンなど、テロ対策に取り組む諸外国の艦船に対し、洋上における補給活動を行ってきた3。この補給活動によって、各国艦艇は燃料や水などの補給のために港に戻ることなく広範な海域において活動を継続することが可能となった。
こうした洋上での補給活動は、旧テロ対策特措法の失効による一時中断を挟みながらも約8年にわたり行われたが、近年においては、補給回数が一時期に比べ減少してきたことにともない、補給活動の意味合いが小さくなってきていた面もあった。このことから、政府としては、旧補給支援特措法の期限を延長せず、アフガニスタンに対しては民生支援を中心として引き続きテロ対策に取り組んでいくこととし4、旧補給支援特措法に基づく補給支援活動は、10(同22)年1月15日の同法の期限をもって終了した。また、現在、アフガニスタンでは国軍も含めた治安機関の人材育成が重要な課題の1つとなっていることを踏まえ、防衛省では、自衛隊による支援のあり方について必要な検討を実施している。
3 海上自衛隊の部隊による補給活動
旧テロ対策特措法(同法の失効後は旧補給支援特措法)に基づく補給活動としては、01(同13)年12月以降、途中の中断をはさみながら、10(同22)年1月までの間に、人員のべ約1万3,300名(旧補給支援特措法のもとでは約2,400名)により、テロ対策に取組む諸外国の艦船に対し、艦船用燃料、艦艇搭載ヘリコプター用燃料および水の補給を行った。
参照資料61・62

4 補給支援活動の評価など
広範な海域において、艦船が燃料や水などの補給のために帰港することなく、継続して必要な活動を行うためには、補給艦から洋上補給を受けることが必要である。海自は、テロ対策海上阻止活動にかかる任務に従事している諸外国の軍隊などの艦船に対し洋上補給を行ったが、海上阻止活動のもとで行われるテロリストや麻薬などの海上移動の防止は、アフガニスタン国内のテロリストの移動と物資および資金の調達を含む行動の自由を制限することに一定の効果を有した。
また、この活動を通じ、海自の補給技術はきわめて信頼性の高いものであることが確認され、また、各種業務についてのノウハウ・知見の蓄積・共有が進み、長期間継続して洋上補給を実施する能力を向上させることができた。


 
1)10(平成22)年4月現在、アフガニスタンを再びテロの温床としないとの観点から、46カ国がアフガニスタンの治安維持を通じて、アフガニスタン政府の支援を行うISAFに参加している。

 
2)わが国は、出入国管理、テロ関連情報の収集・分析、ハイジャックなどの防止対策、NBC攻撃への対処、国内重要施設の警戒警備、テロ資金対策などの分野を中心にテロなどの未然防止に関する諸施策などを推進している。さらに、政府は04(平成16)年12月に、16項目の具体的措置を含む「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、紛失・盗難旅券情報の国際的共有、出入国管理などの強化、スカイ・マーシャルの導入、外国人宿泊客の本人確認強化、テロに使用されるおそれのある物質の管理強化、情報収集能力の強化などに取り組んでいる。

 
3)08(平成20)年1月以降は、旧補給支援特措法に基づき、テロ対策海上阻止活動にかかる任務に従事する諸外国の艦船に対する補給に限定。テロ対策海上阻止活動とは、諸外国の軍隊などが行っているテロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動のうち、テロリスト、武器などの移動を国際的協調の下に阻止しおよび抑止するためインド洋上を航行する船舶に対して検査、確認その他の必要な措置を執る活動をいう。

 
4)09(平成21)年11月、政府は「テロの脅威に対処するための新戦略」(アフガニスタン・パキスタンに対する日本の新たな支援パッケージ)を取りまとめ、早急に必要とされる約800億円の支援を行うとともに、それまでに約束した総額約20億ドル程度の支援に替えて、今後のアフガニスタン情勢に応じて、09(同21)年から概ね5年間で、最大約50億ドル程度までの規模の支援を行うとした。


 

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