第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 海賊行為の発生状況と国際社会の取組
近年、ソマリア沖・アデン湾の海域においては、機関銃やロケット・ランチャーなどで武装した海賊による事案が多発・急増している。ソマリア沖・アデン湾の海賊はわが国を含む国際社会への脅威であり、緊急に対応すべき課題である。また、東南アジア海域における海賊事案発生数は、ここ数年減少傾向にあったが、10(平成22)年の発生件数は前年を上回っている。
(図表III-1-3-1参照)
 
図表III-1-3-1 ソマリア沖・アデン湾における海賊等事案の発生状況(東南アジア発生件数との比較)

1 海賊行為の発生状況
ソマリア沖・アデン湾において11(同23)年に入って発生した海賊事案は、6月下旬現在で約160件発生しており、前年同時期を上回る発生件数である。
海賊事案が発生する主な海域については、08(同20)年においては、アデン湾において集中的に発生していたが、09(同21)年においては、ソマリアの東方沖やセーシェル周辺海域において海賊事案の発生が多く見られるようになり、さらに10(同22)年においてはこれに加えてアデン湾の東方およびインド洋中央部・アラビア海においても海賊事案が発生している。11(同23)年5月現在では、アデン湾東方において海賊事案が発生している。
この点、09(同21)年にはアデン湾にわが国を含む各国が海賊対処に従事する艦艇や哨戒機を派遣し、またその後ソマリア沖においても各国が対抗措置を実施し始めたことから、海賊対処が比較的手薄とされる海域において海賊が活動を活発化させている可能性がある。

2 国際社会の取組
08(同20)年6月に採択された国連安保理決議第1816号をはじめとする累次の決議1において、各国は、ソマリア沖・アデン湾における海賊行為を抑止するための行動をとるよう要請されており、特に軍艦および軍用機を派遣することを要請されている。
これまでに、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ギリシャ、デンマーク、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、ノルウェー、ベルギー、カナダ、ロシア、トルコ、シンガポール、インド、中国、韓国、マレーシア、サウジアラビア、イエメン、ケニア、オーストラリア、パキスタン、バーレーンなどがソマリア沖・アデン湾に軍艦などを派遣している。また、欧州連合(EU:European Union)は、08(同20)年12月、海賊対処のための作戦(アタランタ作戦)の開始を決定して、世界食糧計画(WFP:United Nations World Food Programme)の物資を輸送する船舶の護衛や同海域の警戒などを実施しており、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)も、09(同21)年3月、NATOとしての海賊対策作戦を再開した。
 各国は、現在も引き続き、ソマリア沖・アデン湾の海賊に対して重大な関心を持って対応しており、このような中で、EUは10(同22)年6月に活動の期限を12(同24)年末まで延長し、またNATOも10(同22)年3月に12(同24)年末まで延長することとした。


 
1)ほかに、08(平成20)年決議第1838号、1846号、1851号、09(同21)年決議第1897号、10(同22)年決議第1918号及び1950号がある。


 

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