第5節 最近の動向を踏まえた取組
1 宇宙開発利用に関する取組
専守防衛を旨とするわが国にとっては、各種事態の兆候を事前に察知するための情報収集機能やわが国周辺海空域の警戒監視機能を強化する上で、また、自衛隊が国際平和協力活動などにおける通信手段などを確保する上で、いかなる国家の領域にも属さず、地表の地形などの条件の制約を受けない宇宙空間の利用は極めて重要である。
08(平成20)年5月、宇宙基本法
1が成立し、施行されたことを受け、わが国における宇宙開発利用は、国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり行われることがより明確となった。また、国は、国際社会の平和および安全の確保ならびにわが国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずることとされた。
宇宙基本法に基づき、内閣に設置された宇宙開発戦略本部は、09(同21)年6月2日、宇宙を活用した安心・安全で豊かな社会の実現、宇宙を活用した安全保障の強化など6つの方向性を柱とした宇宙基本計画を決定した。
また、10(同22)年12月17日に閣議決定された新防衛大綱において、情報収集および情報通信機能の強化などの観点から、宇宙の開発および利用を推進することとされた。
一方、防衛省においては09(同21)年1月15日に、宇宙開発利用推進委員会において、「宇宙開発利用に関する基本方針について」(基本方針)を決定した。基本方針においては、個々の装備品やシステムを有機的に連接させることにより、状況把握、情報共有、指揮・統制などの高度化を実現し、装備の集合体として最大限の能力を発揮することに防衛力の整備の重点が置かれていることを踏まえれば、防衛分野において宇宙空間の特性を利用することは極めて有益であり、特にC4ISR
2の機能を強化する有効な手段であるなどの考え方を示している。
今後、防衛省としては、基本方針や新防衛大綱、宇宙基本計画などを踏まえ、内閣官房をはじめとする関係府省との連携を図りつつ、安全保障分野における宇宙開発利用を推進していくこととしている。平成23年度においては、1)宇宙を利用したC4ISRの機能強化のための調査・研究、2)Xバンド衛星通信機能の向上、3)米空軍宇宙基礎課程への派遣などの事業に取り組むこととしている。
2)Command, Control, Communication, Computer, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance の略で、「指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、監視、偵察」の各機能の総称。