第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

(解説)防衛力の人的基盤(パイロットの養成)

 防衛力を支える人的基盤である隊員はさまざまな職種から構成され、各種段階に応じた多様な教育訓練が必要となる。以下では、一例として、特殊な資格が求められるパイロットの養成について紹介する。
 自衛隊は、平素からのわが国周辺での警戒監視や災害派遣、またハイチでのPKOやソマリア沖・アデン湾での海賊対処、さらには本格的な侵攻対処に至るまでのさまざまな場面において、その場面に最もふさわしい航空機を使い分け、任務を遂行する。
 このようなさまざまな任務を遂行するため、自衛隊は多種多様な航空機を保有している。一口に航空機といっても固定翼機と回転翼機があり、さらに、固定翼機には戦闘機、哨戒機、偵察機、輸送機、早期警戒管制機などが、回転翼機には戦闘ヘリ、哨戒機、輸送機、掃海・輸送機、救難機などがある。機種が異なれば、航空機の操縦方法はもちろん、パイロットに求められる精神的・身体的な適性も異なる。このため、自衛隊は独自にパイロットを養成しており、そのために長い期間と多額の経費を投入している。
 パイロットの養成には、1)一般幹部候補生課程(防衛大学校卒業後または一般大学卒業後)のコース、2)航空学生課程(海・空自のみ、高等学校卒業後)のコース、3)陸曹航空操縦課程(陸自のみ、部内選抜で3曹の階級に昇任後)のコースの3つのコースがある。
 空自の飛行教育を例にあげれば、パイロットは、戦闘機操縦者、輸送機操縦者、救難機操縦者に区分される。最初は全員が同じ初等練習機の教育課程に入るが、その後、各人の適性などに応じてそれぞれのコースに進む。いずれのコースもジェット機を使用した高度な教育が行われ、実際の部隊配置までには約3年を要する。
(下図「航空自衛隊の飛行教育課程の概要」参照)
 以上のように、多種多様な任務を遂行するためには、計画的・継続的に一定数のパイロットを独自に養成することが非常に重要である。しかしながら、その背景として、近年、少子化が進み、募集環境はますます厳しくなっている。数少ない候補者から、航空機の著しい技術的進歩に対応できるだけでなく、自衛隊のパイロットに求められる精神的・身体的な適性を備えた人材を確保することは、とりわけ切実な問題である。
 
航空自衛隊の飛行教育課程の概要

 

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