第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

(解説)軍事科学技術の動向(通常兵器による迅速なグローバル打撃(Conventional Prompt Global Strike))

 先進諸国は、精密誘導技術やC4ISRを含む情報関連技術、無人化技術などの研究開発を引き続き重視している。また、地域紛争への対応により適応した装備品の研究開発や、気候変動と密接なつながりを持つエネルギー対策にも重点を置くようになってきている。
 10(平成22)年2月、バイデン米副大統領は「技術の進歩に伴い、核兵器と同じ(抑止という)目的を果たす核以外の手段を開発している」と述べ、核兵器への依存を軽減させる能力の一つとして、「通常兵器による迅速なグローバル打撃」構想を指すとみられる例を示した。同構想は、世界のいかなる場所に所在する目標に対しても、命中精度の高い非核兵器によって、敵のアクセス拒否能力を突破して迅速な打撃を与えようとするものであり、「核態勢の見直し」(NPR)は同構想を、長距離打撃能力の一部として研究中としている。また、同構想による兵器は、米国によれば、新たな戦略兵器削減条約における弾頭数および運搬手段数の制限を受けるものとされている。
 「通常弾頭搭載型打撃ミサイル」(CSM:Conventional Strike Missile)は、この構想を主導する開発計画であり、退役した弾道ミサイルのロケットなどを流用するものの、弾道ミサイルとは明確に異なる低い軌道を描くことで、核兵器との混同を防ぐとしている。
 
弾道ミサイルとCSMの軌道の比較(イメージ)

 

    次の項目に進む