第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 わが国の取組など

(1)特定通常兵器使用禁止・制限条約
 近年、不発弾などの爆発性戦争残存物(ERW:Explosive Remnants of War)がもたらす人道上の危険性を減少させるための交渉や検討などが行われてきた。
 03(同15)年の特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW:Convention on Prohibitions or Restrictions on the Use of Certain Conventional Weapons Which May Be Deemed to Be Excessively Injurious or to Have Indiscriminate Effects)締約国会議においては、ERWに関する議定書(いわゆる第5議定書)が採択され、06(同18)年11月に発効した。
 しかし、その後もERWに関して、特にクラスター弾(複数の子弾を内蔵する弾薬)の不発弾がもたらす問題への対応の必要性から議論が継続され、07(同19)年11月のCCW締約国会議において、クラスター弾の人道上の懸念に早急に対応するための交渉を行うことが決定された。しかしながら、現在まで最終的な合意には至っていない。
 わが国は、クラスター弾規制の問題については、クラスター弾に関する条約への取組とともに、米、中、露などのクラスター弾の主要な生産国および保有国も参加するCCWの枠組においてクラスター弾に関する議定書が作成されることが重要と考えている。このため、防衛省からも議定書の追加のための議論や交渉の場である締約国会議、政府専門家会合などに随時職員を派遣し、各国と積極的な議論を行っている。

(2)クラスター弾に関する条約
 CCWの枠外でもクラスター弾の禁止を求める気運が高まった。その後、一連の国際会議において交渉(オスロ・プロセス)1を行った結果、08(同20)年5月のダブリン会議において「クラスター弾に関する条約」2が、わが国を含む107か国の参加国により採択された。同年12月、オスロにおいてわが国を含む94か国が署名し、わが国は09(同21)年7月に同条約の受諾書を寄託した。
 10(同22)年2月、発効に必要な30番目の批准書などが国連事務総長へ寄託され、同年8月1日に同条約が発効することとなった。他方、クラスター弾の主要な生産国および保有国である米国、中国、ロシアなどは現在同条約には署名していない。
 10(同22)年8月、同条約が発効することにともない、自衛隊が保有するすべてのクラスター弾の使用などが直ちに禁止されることから、防衛省・自衛隊としては、わが国の安全保障を確保するため、クラスター弾の機能の一部を喫緊に補完するための精密誘導型装備などの導入を進めている。
 また、同条約発効後原則8年以内に、保有するクラスター弾を廃棄することが規定されていることから、同弾の廃棄を安全かつ着実に実施するよう努めていく。

(3)対人地雷禁止条約
 99(同11)年代初頭より、対人地雷問題に関する国際的関心が高まった。1999年には、対人地雷禁止条約が発効し、現在その締約国は、156か国にのぼっている。
 防衛省・自衛隊は03(同15)年2月までに、この条約で認められた地雷の探知、除去などの技術開発と訓練のための必要最小限の例外的な保有分を除き、全ての対人地雷を廃棄した。
 一方、わが国の安全保障を確保するため、条約上の対人地雷に該当せず、一般市民に危害を与えるおそれのない代替手段として、指向性散弾3を含む対人障害システムの整備を進めている。
 また、ARF参加国は、26か国のうち13か国しか締結していないことから、防衛省としても条約未締結のARF参加国などに対し、これまで、条約の締結を働きかけている。
 さらに、防衛省は、例外保有などに関する年次報告を国連に対して行うとともに、関連国際会議などに適宜職員を派遣するなど、国際社会の対人地雷問題への取組に積極的に協力している4

(4)国連軍備登録制度
 防衛省は、毎年、装備品の年間輸入数量を国連に登録するとともに、保有数や国内調達、小型武器の国内調達数に関する情報も自主的に提供している。
 また、この制度の改善・強化のために行われている政府専門家会合などに、適宜職員を派遣している。


 
1)ノルウェーほか賛同国(ペルー、オーストリア、ニュージーランド、アイルランドなど)およびNGOを中心に開始されたプロセスで、中南米、アフリカなど開発途上国からも多数国が参加。

 
2)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/shomei_37.pdf>参照。

 
3)敵歩兵の接近を妨害する対歩兵戦闘用爆薬。民間人が無差別に被害を受けないよう隊員が目標を視認して作動させるものであり、人の存在、接近または接触により爆発するように設計されたものではない。

 
4)防衛省は、カンボジアにおける対人地雷除去活動への支援のため、99(平成11)年から06(同18)年12月までの間、退職自衛官を国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)に推薦し、この退職自衛官はJICAの長期派遣専門家の枠組で、カンボジア地雷対策センター(CMAC)の整備・輸送アドバイザーとして派遣されていた。


 

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