第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

4 パシフィック・パートナーシップ2010への参加

 このように、近年のアジア太平洋地域の安全保障枠組においては、相互理解・信頼関係の増進のみならず、実践的・具体的な協力が積み重ねられているところである。鳩山内閣総理大臣(当時)は、こうした枠組を通じた協力の積み重ねの先に共同体を構想し、09(同21)年11月、シンガポールで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)首脳会議に出席した機会を捉え、ラジャラトナム国際関係大学院(RSIS:S.Rajaratnam School of International Studies)において、「アジアへの新しいコミットメント−東アジア共同体構想の実現に向けて−」と題する演説を行い、その中で、米国が主催するパシフィック・パートナーシップ(PP:Pacific Partnership)2010への参加についても表明した。
 07(同19)年より行われているPPは、米海軍を主体とする艦艇が地域内の各国を訪問して、医療活動、文化交流などを行い、その際に各国政府、軍、国際機関、NGOとの協力を通じ、参加国の連携強化や国際災害救援活動の円滑化などを図る活動である。
 わが国は、07(同19)年から、海自の医官など数名を派遣して調査研究を実施してきた。10(同22)年5月から7月まで行われたPP2010には、海自の輸送艦「くにさき」と陸・海・空自の医療チームをもって参加し、また、NGOなどの民間団体とも協力し、ベトナムで約1,700人、カンボジアで約2,700人の診療を行い、現地の学校で文化交流を行った。
 PP2010への参加は、関係国間の相互理解と協力関係を増進し、国際的な安全保障環境を改善するとともに、日米安保体制の強化に役立つことから、わが国の平和と安全を確保していくために重要な意義がある。また、国際緊急援助活動や国際平和協力業務での医療や輸送に関する自衛隊の練度・技量の向上を図るとともに、民間団体との調整・連携のためのノウハウを得る上でも有意義な機会が確保できるものと考えている。
 
ベトナムの住民に内科診療を行うNGO
 
カンボジアの小学生に剣道を教える自衛隊員

 

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