1 日米安全保障体制の意義
1 わが国の安全の確保
現在の国際社会において、国の平和、安全および独立を確保するためには、核兵器の使用をはじめとするさまざまな態様の侵略から軍事力による示威、恫喝(どうかつ)に至るまで、あらゆる事態に対応できる隙(すき)のない防衛態勢を構築する必要がある。しかしながら、超大国である米国でさえ、グローバル化の進んだ国際社会にあって、一国のみで自国の安全を確保することは困難な状況にある。ましてや、わが国が独力でこのような態勢を保持することは、人口、国土、経済の観点からも容易ではない。また、このような方向は、わが国の政治的姿勢として適切とはいえず、必ずしも地域の安定に寄与するものではない。
このため、わが国は、前述の基本的な価値観や、世界の平和と安全の維持という目的を共有し、経済面においても関係が深く、アジア太平洋地域における利益を共有し、かつ、強大な軍事力を有する米国との二国間の同盟関係を継続してきた。
具体的には、日米安保条約第5条は、わが国に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処することを定めている。この米国の日本防衛義務により、わが国に対する武力攻撃を企図するに際しては、相手国は、自衛隊のみならず、米国の有する強大な軍事力とも直接対決する事態を覚悟しなければならなくなる。この結果、相手国は侵略を行えば耐えがたい損害を被ることを明白に認識することとなって、わが国に対する侵略を思いとどまることになる。すなわち、侵略は抑止されることになる。
わが国としては、このような米国の軍事力による抑止力をわが国の安全保障のために有効に機能させることで、自らの適切な防衛力の保持と合わせ、隙のない態勢を構築し、わが国の安全を確保していく考えである。