第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

1 わが国の弾道ミサイル防衛

(1)BMDシステムの整備の概要

ア 基本的考え方
 わが国が整備を進めているBMDシステムは、現在自衛隊が保有しているイージス艦とペトリオット・システムの能力を向上させるとともに、自動警戒管制システム(JADGE:Japan Aerospace Defense Ground Environment)により、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を連携して効果的に行う多層防衛を基本としている。

参照 資料2829

イ BMDシステムの構成
 わが国のBMDシステムは、1)弾道ミサイルをミッドコース段階で迎撃するイージス艦および2)ターミナル段階で迎撃するペトリオットPAC-3の各ウェポンシステム、3)弾道ミサイルを探知・追尾するセンサーシステム、さらに4)ウェポンシステムとセンサーシステムを効果的に連携させて組織的に弾道ミサイルに対処するための指揮統制・戦闘管理・通信システムにより構成されている。
(図表III-1-2-2 参照)
 
図表III-1-2-2 BMD整備構想・運用構想(イメージ図)

ウ BMDシステムの整備の方針
 BMDシステムの整備にあたっては、費用軽減および効果的・効率的なシステム構築の観点から、現有装備品の活用を図ることとしている。イージス艦とペトリオット・システムの能力向上をはじめ、センサーについても、現有の地上レーダーの能力向上型を活用するほか、新たに整備した警戒管制レーダー(FPS-5)3も航空機などの従来型の脅威と弾道ミサイルの双方に対応可能なものである。また、JADGEについても同様である。

エ BMDシステムの整備の状況
 平成22年4月末までに、海上自衛隊(海自)はイージス艦「こんごう」、「ちょうかい」、「みょうこう」にSM-3を搭載し、また、同月末までに航空自衛隊(空自)は防衛計画の大綱に定めるペトリオットPAC-3の整備目標を達成した(第1高射群の4個高射隊(習志野、武山、霞ヶ浦、入間)、第2高射群の3個高射隊(芦屋、高良台、築城)、第4高射群の4個高射隊(饗庭野(あいばの)、岐阜、白山)および高射教導隊、第2術科学校(浜松))にペトリオットPAC-3を配備した。防衛省・自衛隊は、引き続きBMDシステムの整備を進めることとしており、平成23年度までに、イージス艦(BMD機能付加):4隻、ペトリオットPAC-3:16個FU4(高射隊および教育所要分)、FPS-5:4基、FPS-3改(能力向上型):7基をJADGEなどの各種指揮統制・戦闘管理・通信システムで連接したシステムを構築することを当面の目標としている。
 平成22年度予算においては、弾道ミサイル防衛も含め、現大綱の考え方に基づき防衛力整備を行うとの方針に基づき、既存のPAC-3部隊のための、PAC-3ミサイルの追加取得、BMDシステムの維持・整備など弾道ミサイル対処能力の一層の向上を図るため、計538億円(契約ベースの金額で初度費を除く。)を計上している。
 他方、BMD能力を付加されていない既存のPAC-2部隊(Patriot Advanced Capability-2)については、装備システムのバージョンアップを行うことにより、部品枯渇に対応し現有機能を維持するための経費として、計619億円(契約ベースの金額で初度費を除く。)を計上している。
 
イージス艦から発射されたSM-3

(2)将来の能力向上
 依然として弾道ミサイル技術の拡散は進展しており、弾道ミサイルが将来的に迎撃回避能力を備えたものになっていく可能性は否定できない。また、従来型の弾道ミサイルに対しても、防護できる範囲の拡大や迎撃確率を向上することなどが求められ、迎撃ミサイルの運動性能の向上などを図り、BMDシステムの効率性・信頼性の向上に取り組んでいくことが必要である。
 このような観点から99(同11)年から行ってきた日米共同技術研究で得られた研究成果を踏まえ、06(同18)年から能力向上型迎撃ミサイルにかかわる日米共同開発を開始するなど将来の能力向上に努めている。
(図表III-1-2-3・4 参照)
 
図表III-1-2-3 近年の弾道ミサイルの迎撃回避手段
 
図表III-1-2-4 BMDミサイルの将来の能力向上による防護範囲の拡大(イメージ図)


 
3)弾道ミサイルの探知・追尾を可能とするもので、平成11年度より開発(旧称:FPS-XX)。

 
4)Fire Unit(対空射撃部隊の最小射撃単位)。


 

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