第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

4 文民統制の確保

 文民統制は、シビリアン・コントロールともいい、民主主義国家における軍事に対する政治の優先、または軍事力に対する民主主義的な政治による統制を指す。
 わが国の場合、終戦までの経緯に対する反省もあり、自衛隊が国民の意思によって整備・運用されることを確保するため、旧憲法下の体制3とは全く異なり、次のような厳格な文民統制の制度を採用している。
 
自衛隊各幕僚長等との意見交換であいさつする菅内閣総理大臣〔内閣広報室〕

 国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織などを法律・予算の形で議決し、また、防衛出動などの承認を行う。
 国の防衛に関する事務は、一般行政事務として、内閣の行政権に完全に属しており、内閣を構成する内閣総理大臣その他の国務大臣は、憲法上文民でなければならないこととされている。内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有しており、国の防衛に専任する主任の大臣である防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括する。また、内閣には、国防に関する重要事項などを審議する機関として安全保障会議4が置かれている。
 防衛省では、防衛大臣が国の防衛に関する事務を分担管理し、主任の大臣として、自衛隊を管理し、運営する。その際、防衛副大臣と二人の防衛大臣政務官が政策と企画について防衛大臣を助けることとされている5
 また、09(平成21)年8月、防衛省の所掌事務に関する重要事項に関し、自らが有する見識に基づき、防衛大臣に進言などを行う防衛大臣補佐官を置くとともに、防衛大臣のもとに政治任用者、文官、自衛官の三者が一堂に会して防衛省の所掌事務に関する基本的方針について審議する防衛会議を設置した。これらにより、防衛大臣を補佐する体制を強化し、文民統制のさらなる徹底を図っている。

参照 III部4章1節

 以上のように、文民統制の制度は整備されているが、それが実をあげるためには、国民が防衛に対する深い関心を持つとともに、政治・行政両面における運営上の努力が引き続き必要である。
 
政務三役会議


 
3)軍に関する事項について、内閣の統制の及び得ない範囲が広かった。

 
4)議員は、内閣総理大臣(議長)、内閣法第9条の指定大臣(内閣総理大臣に事故のあるとき、欠けたときなどに臨時に内閣総理大臣の職務を行う予め指定された国務大臣)、総務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣、内閣官房長官、国家公安委員会委員長。

 
5)このほかにも防衛大臣による国の防衛に関する事務の分担管理および自衛隊の管理・運営を確実なものとするため、防衛大臣を補佐する体制が整えられており、これらを含む自衛隊の組織については、III部4章1節参照。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む