1 米国との関係
オーストラリアは、アジア太平洋地域の戦略的安定は米国のプレゼンスに大きく依存すると認識しており、ANZUS条約(Security Treaty between Australia, New Zealand and the United States of America)
2に基づく米国との同盟関係を重視している。外相・国防相による閣僚協議(AUSMIN:Australia United States Ministerial Consultations)を毎年行うとともに、アフガニスタンで豪軍が活動する理由として米国との同盟関係の重要性を挙げるほか、米国のアフガニスタンおよびパキスタンに対する戦略の見直しや「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)策定の過程に関与し協議を重ねるなど、緊密な同盟関係を維持している。また、「タリスマン・セーバー」
3を始めとする共同訓練を実施するほか、人道支援・災害救援任務に共同で対処するためのインターオペラビリティの向上に努めている
4。オーストラリアは、米国の主導するF-35統合攻撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画への参加を表明しているほか、ミサイル防衛における協力
5も行うこととしている。さらに、情報・監視・偵察(ISR)、軍事衛星通信、情報、サイバーセキュリティにおける協力も推進している。
2)52(昭和27)年に発効したオーストラリア・ニュージーランド・米国間の三国安全保障条約。ただし、ニュージーランドが非核政策をとっていることから、86(同61)年以来、米国は対ニュージーランド防衛義務を停止している。
3)「タリスマン・セーバー」は2年に1度行われている米豪共同訓練で、伝統的紛争から平和維持や人道支援に至る作戦分野における、即応性やインターオペラビリティの向上を目的とする。05(平成17)年に第1回を実施。09(同21)年開催時は、揚陸強襲訓練、市街戦訓練、空挺降下訓練などに、米豪合わせて24,000人以上が参加した。
4)09(平成21)年、共同訓練の価値を高めコストを削減する「共同訓練能力に関する了解覚書(Joint Combined Training Capability Memorandum of Understanding)」を締結した。
5)03(平成15)年12月、オーストラリアは米国のミサイル防衛計画への参加を表明し、04(同16)年のAUSMINにおいて、以後25年間にわたる「ミサイル防衛システムの開発および試験に関する覚書」が締結された(覚書の内容は非公表)。オーストラリアは、04(同16)年8月、新型防空駆逐艦の戦闘システムを米国製イージス・システムにすることを決定しており、同駆逐艦が弾道ミサイル防衛に対応可能なものとなる可能性も示唆されている。