第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 中国との関係

 オーストラリアは、中国について、東アジアを越えて戦略的影響力を持ち、米中関係がアジア太平洋地域の戦略的安定に最も重要と認識している6。経済成長に伴い国防費を増大させている中国について、十分な説明がなされなければ近隣諸国に懸念を与える可能性があり7、透明性を求める圧力に直面しているとし8、相互理解と利益の共通する分野における協力を増進するため、豪中防衛戦略対話を継続的に実施している9。また、艦艇の相互訪問を実施しているほか、捜索救難訓練を共同で実施するなど豪中の防衛関係を発展させるための10交流も行われている11


 
6)09年「国防白書」。

 
7)09年「国防白書」では、「中国は、かなりの差をもってアジア最強の軍事力となる」、「中国の軍事力近代化のペース、範囲、構造が注意深く説明されなければ、また中国がその軍事計画について他国との信頼醸成に努めなければ、近隣に懸念の原因を与える可能性がある。近年中国はこうした説明や信頼醸成を開始したが、一層の努力を行う必要がある。そうしなければ、中国の軍事力増強計画の長期的な戦略目的について、特に軍事力近代化が台湾を巡る紛争に必要な範囲を超える可能性を持つように思われることから、近隣諸国に疑念が生じる」と指摘されている。
中国国防部は、08(同20)年5月5日の定例記者会見において、「中国の軍事力の近代化はいかなる国にも脅威とならない。関係国は、客観的に、偏見を持たず扱うべきである」と述べている。

 
8)09(平成21)年3月10日フィッツギブン国防相(当時)のオーストラリア国防大学におけるスピーチ。

 
9)09(平成21)年10月、第12回豪中防衛戦略対話を実施。なお、同対話は08(同20)年に参謀長/国防次官レベルに格上げされている。

 
10)09年「国防白書」では、「中国との防衛関係を発展させることは優先課題である。さらなる関与は、中国の軍事能力とその意図について透明性を促し、相互のアプローチを理解し、利益を共有する分野でのさらなる協力を確保するために重要である」とされている。

 
11)04(平成16)年10月に青島において豪中間の初の海軍共同訓練として、捜索救難訓練を実施したほか、07(同19)年10月にはタスマン海においてニュージーランドも交えた3カ国の捜索救難訓練を実施した。09(平成21)年9月、豪国防軍司令官と米太平洋軍司令官が、中国に対し、3カ国による軍事演習を打診することで合意したと伝えられた。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む