第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

第5節 東南アジア

1 全般

 東南アジアは、マラッカ海峡や南シナ海など、太平洋とインド洋を結ぶ交通の要衝(ようしょう)を占めており、わが国にとって重要な地域である。この地域の各国は、政治的安定と着実な経済発展に努力し、程度において差があるものの、総じて近年経済的な発展を遂げている。各国とも、経済発展などにともない、域内各国間および域外との相互依存関係が深化してきている。この地域には、南沙(なんさ)群島などの領有権をめぐる対立や、少数民族問題、分離・独立運動、イスラム過激派などが依然として不安定要素として存在しているほか、近年は減少傾向にあるものの、依然として船舶の安全な航行を妨害する海賊行為なども発生している1。これらの問題に対処するため、この地域の各国は、伝統的な国防のほか、テロ対処、海賊などの新たな安全保障上の課題にも応じた軍事力などの形成に努めている。近年では経済成長などを背景として、特に、海・空軍力を中心とした軍の近代化が進められてきている。
 なお、この地域において、米国は多国間軍事演習「コブラ・ゴールド」や「協力海上即応訓練(CARAT:Cooperation Afloat Readiness and Training)」2など累次にわたる共同軍事演習や軍事技術供与、軍事援助などを実施し、東南アジア諸国との間で信頼関係を構築し、東南アジア諸国の即応能力の強化に努めている。
(図表I-2-5-1 参照)
 
図表I-2-5-1 東南アジアと日中韓との兵力及び国防予算の比較(09(平成21)年)


 
1)国際商業会議所(ICC:International Chamber of Commerce)国際海事局(IMB:International Maritime Bureau)のレポートによると、東南アジアにおける海賊件数は、03(平成15)年170件、04(同16)年158件、05(同17)年102件、06(同18)年83件、07年(同19)年70件、08(同20)年54件、09(同21)年45件、と年々減少している。

 
2)CARATは、米国が東南アジア6か国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)との間で行っている、一連の二国間演習の総称である。


 

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