第4節 ロシア
1 全般
ロシアは、90年代を通じて失われた社会・経済発展の水準を取り戻したとし、メドヴェージェフ大統領の下、引き続き国際社会における多極化を志向しつつ、「強い国家」として国益を追求していこうとしている。
ロシアがこれまで国力を回復できた要因の一つに、主要輸出部門である原油の価格高騰などによる経済の回復があり、軍事力の近代化に当たっても、軍備競争を避けつつ、自国の経済発展を犠牲にしないこととしている
1。
ロシアの今後の社会発展と経済発展には、エネルギー資源部門への過度の依存体制など、各種の制約要因が存在していると考えられるが、ロシア自身、ロシアのさらなる発展のためには、従来の資源依存型経済から脱却し、技術革新に裏付けられた根本的に新たな基盤の上に経済・社会を立て直し、民主的政治制度を定着させ、また、汚職を撲滅するなど全面的な近代化が必要と認識しており
2、今後、ロシアがこうした課題をいかに克服していくかが注目される
3。
1)プーチン大統領(当時)が08(平成20)年2月に行った「2020年までのロシアの発展戦略」とする演説の中で、「軍事力整備への配分は、国の能力に適合したものとし、社会・経済発展を犠牲にしてはならない。」とも述べている。
3)昨今の原油価格低迷や金融危機の影響もあり、09(同21)年の経済成長率は、ロシアにおける通貨危機(98(平成10)年)以来のマイナス成長を記録した(−7.9%)(2008年は5.6%)。