第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

6 軍の国際的な活動

 中国軍は近年、平和維持、人道支援・災害救助、海賊対処といった非伝統的任務を重視し始めており、これらの任務を行うために積極的に海外に部隊を派遣するようになってきている47。このような軍の国際的な活動に対する姿勢の背景には、中国の国益が国境を越えて拡大することに伴い、国外において国益の保護および促進を図る必要が高まっていることや大国として国際社会に対する責任を果たす意思を示すことにより自国の地位を強化する意図があるとみられている。
 中国は、PKOを一貫して支持するとともに積極的に参加するとしており、「2008年中国の国防」によれば、これまでにPKOにのべ1万1,063名の軍人が派遣されている。国連によれば、中国は、10(同22)年1月時点で、国連リベリア・ミッション(UNMIL:United Nations Mission in Liberia)、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH:United Nations Stabilization Mission in Haiti)など10のPKOに計2,131名の部隊要員、文民警察要員、軍事監視要員を派遣しており、PKOにおいて一定の存在感を示している。中国のPKOに対する積極姿勢の背景には、同活動を通じて当該PKO実施地域、特にアフリカ諸国との関係強化を図るとの狙いもあるとみられている。
 中国は、ソマリア沖・アデン湾における海賊に対処するための国際的な取組にも参加しており、中国海軍として初めての遠洋における任務として、08(同20)年12月から、同海域に海軍艦艇を派遣し、中国船舶などの護衛にあたらせている。これは、中国海軍がより遠方の海域で作戦を遂行する能力を向上させていることを示すとともに、中国が自国の海上輸送路の保護を一層重視しつつあることのあらわれであると考えられる48


 
47)10(平成22)年1月に発生したハイチにおける大地震に際しては、工兵など軍の要員を含む中国国際救援隊が、地震発生当日(北京時間)に現地に向けて出発している。

 
48)「2008年中国の国防」では、中国海軍が遠洋における協力を発展させ、非伝統的安全保障上の脅威に対応する能力を逐次高めている旨が記述されている。


 

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