第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 韓国の国防政策・国防改革

 韓国は、全人口の約4分の1が集中する首都ソウルがDMZから至近距離にあるという防衛上の弱点を抱えている。
 韓国は、「外部の軍事的脅威と侵略から国家を保衛し、平和的統一を後押しし、地域の安定と世界平和に寄与する」との国防目標を定めている。この「外部の軍事的脅威」の一つとして、従来、北朝鮮が「主敵」と位置付けられていたが、「2004韓国国防白書」以降、「主敵」との表現は削除された6。また、国防目標に加え、「精鋭化された先進強軍」を国防ビジョンに設定し、これらを達成するための国防政策基調として以下の八つを定めている。
1) 包括的安全保障を具現する国防態勢の確立
2) 米韓軍事同盟の創造的発展
3) 先進防衛力量の強化
4) 朝鮮半島における平和構造創出の軍事的支援
5) 与えられた地位で与えられた役割を果たす専門化された軍隊の育成
6) 実用的な先進国防運営体制の構築
7) 国家の発展に応じた兵営環境の改善および福祉の増進
8) 国民と共に歩む国民の軍隊の志向
 現在、韓国は、情報・科学技術の発展に即した軍事力の整備、三軍の均衡発展、非効率性の打破、社会の趨勢(すうせい)に応じた兵営文化の構築などの必要性から、「国防改革2020」7の推進を図ろうとしており、その主要部分は、06(同18)年12月、「国防改革に関する法律」として制定された。
 また、韓国国防部は09(同21)年6月、「国防改革2020」策定以降の安全保障情勢および国防改革推進実績を分析・評価した結果を反映した修正案として、兵力削減規模の縮小や8、北朝鮮の核およびミサイル施設への先制攻撃の可能性などについても明示された「国防改革基本計画2009〜2020」を発表した9


 
6) 「2008韓国国防白書」では、北朝鮮について、「特に、北朝鮮の通常戦力、核・ミサイルなどの大量破壊兵器の開発と増強、軍事力の前方配置などは、韓国の安全保障に対する直接的で深刻な脅威である。」と表現されている。

 
7)改革構想は、1)国防の文民基盤の拡大、2)現代戦の様相に合った軍の構造および戦力体系の構築、3)低費用・高効率の国防管理体系に革新、4)時代の状況に応じた兵営文化への改善を柱としている。

 
8)「国防改革基本計画2009〜2020」では、兵力規模を50万人から51万7,000人に修正している。

 
9)北朝鮮の脅威に対して優先的に備える必要があるとして、1)首都圏の安全確保のため、開戦に際して即座に戦闘力を発揮できるように前線部隊を編成、2)北朝鮮の非対称脅威を敵地域で最大限に遮断および排除するため、監視・偵察、精密打撃および迎撃能力を拡充、3)数的優位に立つ敵に対応するため、部隊別に強力な予備機動力を確保、4)後方地域の安定、予備戦力の精鋭化により継戦能力を確保することを重点としている。


 

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