第III部 わが国の防衛のための諸施策 

1 日米安全保障体制の意義

1 わが国の安全の確保

 今日の国際社会において、国の平和と独立を確保しようとすれば、核兵器の使用から、その他のさまざまな態様の侵略、さらには軍事力による示威、恫喝(どうかつ)まで、あらゆる事態に対応できる隙(すき)のない防衛態勢を構築する必要がある。しかしながら、超大国である米国でさえ、グローバル化の進んだ国際社会にあって、一国のみで自国の安全を確保することは困難な状況にある。ましてや、わが国が独力でこのような態勢を保持することは、人口、国土、経済の観点からも容易ではない。また、このような方向は、わが国の政治的姿勢として適切なものとはいえず、必ずしも地域の安定に寄与するものではない。
 このため、わが国は、自由と人権の尊重、民主主義といった基本的な価値観や、世界の平和と安全の維持への関心を共有し、経済面においても関係が深く、アジア太平洋地域においてより広く受け入れられ、かつ、強大な軍事力を有する米国との二国間の同盟関係を継続してきた。これは、米国の強大な軍事力による抑止力をわが国の安全保障のために有効に機能させることで、自らの適切な防衛力の保持と合わせて隙のない態勢を構築し、わが国の安全を確保していくものである。
 日米安保条約第5条では、わが国に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処することを定めている。この米国の日本防衛義務により、わが国に対する武力攻撃は、自衛隊のみならず、米国の有する強大な軍事力とも直接対決する事態に陥ることを覚悟しなければならなくなる。このため、相手国はわが国に対する侵略を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ず、侵略は未然に防止されることになる。
 
米原子力空母ジョージ・ワシントンと共同訓練を行う海自艦艇

 

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