第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 安全保障の枠組の地理的拡大とパートナーシップ

 NATOは、地域全体の安定を目的として、冷戦終結後いわば安全保障上の空白地帯となった中・東欧地域への拡大を継続してきた12。現在では、中・東欧諸国のほとんどがNATOに加盟するに至っており、NATO拡大に一貫して反対の姿勢を示してきたロシアとも国境を接している。
 NATOは、同時に、NATO非加盟国とのパートナーシップ政策を発展させてきた。たとえば、NATO非加盟の欧州諸国との信頼醸成や相互運用性の向上を目指す「平和のためのパートナーシップ」(PfP:Partnership for Peace)13、地中海地域の安定を目指す地中海ダイアローグ(MD:Mediterranean Dialogue)14などが創設されている。
 また、域外での活動を念頭に、NATOはオーストラリアや日本などコンタクト国15と呼ばれる各国との関係を強化している。
 NATOとロシアの関係では、9.11テロ以降、安全保障に関する共通の課題に対処する必要性から、02(同14)年、NATO・ロシア理事会(NRC:NATO-Russia Council)が設立され、テロに対する取組、軍備管理、戦域ミサイル防衛などの分野で対話や協力の模索が続けられている。昨年8月のグルジア紛争を受けて、NATO・ロシア間の対話は一時凍結されたものの、同年12月のNATO外相会議においては、ロシアとの対話を再開することで合意した。本年のNATO首脳会議においては、閣僚級を含む正式なNRCの再開が合意された。
 EUについても、04(同16)年にポーランドやチェコなど10か国が加盟し、07(同19)年1月にはブルガリアおよびルーマニアが加盟するなど、中・東欧に加盟国を拡大している。
(図表I-2-8-3 参照)
 
図表I-2-8-3 NATOとEU加盟国の拡大状況


 
12)最近では、04(平成16)年3月に中・東欧の4か国およびバルト3国(ルーマニア、スロベニア、エストニア、リトアニア、ラトビア、ブルガリア、スロバキア)、本年4月にアルバニアとクロアチアが加盟した。また、同年12月のNATO外相理事会は、グルジアと、ウクライナに対して、加盟に向けて政治、軍事など各分野での改革を加速させるよう呼びかけた。

 
13)94(平成6)年に創設され、NATOと中・東欧諸国をはじめとするNATO非加盟の欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)諸国が個別に協力協定を締結している。

 
14)94(平成6)年に創設され、現在7か国(アルジェリア、エジプト、イスラエル、ヨルダン、モーリタニア、モロッコ、チュニジア)が参加する。政治的対話や、NATO関連活動への地中海諸国の参加を通して、地中海地域の安定を目指している。

 
15)コンタクト国の名称は04(平成16)年にイスタンブールで行われたNATO首脳会議以降使われており、共通の関心を有する各国とのケース・バイ・ケースでのパートナーシップを推進している。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む