第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

1 米国

 オーストラリアは、アジア太平洋地域の戦略的安定は米国のプレゼンスに大きく依存すると認識しており、ANZUS条約(Security Treaty between Australia, New Zealand and the United States of America)2に基づく米国との同盟関係を重視している。外相・国防相による閣僚協議(AUSMIN:Australia United States Ministerial Consultations)を毎年行うとともに、「タリスマン・セーバー」3などの共同訓練も行っているほか、アフガニスタンにおけるテロとの闘いやイラクに対する軍事作戦に際して、艦艇、航空機、特殊部隊を派遣するなど、緊密な同盟関係を維持している。また、オーストラリアは、米国の主導するF-35統合攻撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画への参加を表明するとともに、同計画の遅延およびF-111の退役に備え、07(平成19)年3月、F/A-18スーパーホーネットの購入を決定している。さらに、オーストラリア国内の米豪共同訓練施設の拡充4を図るなど、米国とのインターオペラビリティの強化に努めるとともに、ミサイル防衛における協力5も行うこととしている。
 
本年4月のAUSMIN後の共同記者会見〔オーストラリア国防省〕


 
2)52(昭和27)年に発効したオーストラリア・ニュージーランド・米国間の三国安全保障条約。ただし、ニュージーランドが非核政策をとっていることから、86(同61)年以来、米国は対ニュージーランド防衛義務を停止している。

 
3)「タリスマン・セーバー」は2年に1度行われている米豪共同訓練で、05(平成17)年に第1回を実施。97(同9)年から2年おきに行われていた共同訓練「タンデム・スラスト」と、03(同15)年に行われた「クロコダイル」を統合させたもの。07(同19)年開催時は、戦闘任務部隊の訓練が行われ、両軍の戦闘即応性とインターオペラビリティの向上が図られた。豪軍からは艦船20隻、航空機25機、兵員7,000人、米軍からは艦船10隻、航空機100機、兵員2万人が参加した。

 
4)04(平成16)年のAUSMINにおいて、クィーンズランド州のショールウォーターベイ訓練施設(陸海空作戦関連)、北部準州のデラミア空軍訓練施設(航空作戦関連)、北部準州のブラッドショウ訓練施設(陸上作戦、水陸両用作戦関連)(いずれもオーストラリア内の米豪合同軍事施設)の拡充を行うことが決定された。

 
5)03(平成15)年12月、オーストラリアは米国のミサイル防衛計画への参加を表明し、04(同16)年のAUSMINにおいて、以後25年間にわたる「ミサイル防衛システムの開発および試験に関する覚書」が締結された(覚書の内容は非公表)。オーストラリアは、04(同16)年8月、新型防空駆逐艦の戦闘システムを米国製イージス・システムにすることを決定しており、同駆逐艦が弾道ミサイル防衛に対応可能なものとなる可能性も示唆されている。


 

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