インドは、国家安全保障政策として、国益を守るための軍事力および最小限の核抑止力の保持、テロおよび低強度紛争から通常戦争および核戦争までの多様な脅威への対処、テロや大量破壊兵器などの新たな脅威に対処するための国際協力の強化などをあげている。
　実際に、インドは、国連平和維持活動(PKO：Peacekeeping Operations)など世界平和を支援するための活動に積極的に参加している。なお、PKOについては、本年2月現在、10の活動に約9,000名を派遣しており²、昨年10月からは、ソマリア沖に艦艇を派遣し、海賊に対する警戒活動を行っている³。
　また、昨年11月のムンバイ連続テロ生起を受け、本年2月には、前年度比で35％増となる国防予算案を提示し、特殊部隊関連装備の迅速な調達などを図っている⁴。

　核政策については、最低限の信頼性ある核抑止力と核の先制不使用政策を維持し、98(平成10)年の核実験の直後に表明した核実験モラトリアム(一時休止)についても継続するとしている。また、03(同15)年1月に公表された核戦略において、核兵器、ミサイル関連部品、技術輸出管理の継続と核分裂性物質禁止条約の協議への参加や核兵器のない世界を目指すコミットメントの継続への言及がある一方で、生物・化学兵器による攻撃を受けた際には、核による報復の選択肢を保持する旨定められた。
　インド軍は、陸上戦力として13個軍団約110万人、海上戦力として2個艦隊約34万4,000トン、航空戦力として19個戦闘航空団などを含む作戦機約660機を有している。現在、空母1隻を保有しているが、新たに国産空母1隻の建造を進めるとともに、ロシアから、空母1隻を改修後に導入することとしている。本年1月には、ロシア製のIL-76輸送機にイスラエル製のレーダーを搭載した早期警戒管制機(AWACS：Airborne Early Warning and Control Systems)が、インドに引き渡された。ほかにも、老朽化したMiG-21戦闘機の退役にともない、多目的戦闘機の調達を企図しており、07(同19)年2月、アントニー印国防相は、多目的戦闘機126機を入札方式で調達する考えを表明している⁵。
　インドは、近年、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの戦力化も進めている。インドは、03(同15)年9月、中距離弾道ミサイル「アグニ2」を陸軍に実戦配備することを公表した。昨年9月には、中距離弾道ミサイル「アグニ3」が陸軍に配備されるとともに、長距離弾道ミサイル「アグニ4」の開発に着手したと伝えられている⁶。
　インドは、自国への脅威に対する防衛的対抗手段として弾道ミサイル防衛の実用化に励んでおり、06(同18)年11月および07(同19)年12月に引き続き、本年3月にも、弾道ミサイル迎撃実験を行い、成功したと発表した⁷。また、米国との間で、弾道ミサイル防衛に関する協議を開始している⁸。
(図表I-2-6-1 参照)