第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 通常戦力など

 通常戦力については、限られた資源を優先的に一部の部隊に投入し、その即応態勢の維持に努めてきた5。ロシア軍は、各軍種の練度の回復に努めており、欧州方面などにおいて、通常戦力による大規模な演習を行っている。また、ソマリア沖での海賊対策に参加したり、中南米諸国を冷戦後初めて長距離爆撃機Tu-160や海軍艦艇が訪問するなど、軍の活動は活発化しつつある。
 通常戦力の装備の開発・調達などは、「2007年から2015年までの装備国家綱領」により行われている。しかし、若年人口の減少、低劣な軍人の生活環境などの結果、人材確保難や軍の規律の弛緩(しかん)6といった課題もあり、通常戦力の近代化の進展は必ずしも十分ではない。
 ロシア軍の将来像については、今後のロシアの経済発展と社会発展の水準に左右される不透明な部分もあり、今後の動向について引き続き注目していく必要がある。


 
5)師団と旅団の一部が常時即応部隊に指定され、これ以外の部隊については、装備は保有しているが、人員充足率は極めて低いとみられている。なお、昨年10月、セルジュコフ国防相は、大統領により同年9月「ロシア連邦軍の将来の姿(「軍の新たな姿」)」が承認され、全部隊を即応態勢に移行させることとした旨等を発表した。

 
6)昨年11月、日本海で航行試験を行っていた太平洋艦隊の原子力潜水艦「ネルパ」で、乗員が消火システムを誤作動させたとみられる事故が発生し、20名(軍人3名、民間人17名)が死亡、21名の負傷者が出ている。


 

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