第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 対外関係など

1 台湾との関係

 中国は、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しており、「一つの中国」の原則が、中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。また、中国は、平和的な統一を目指す努力は決して放棄しないとし、台湾人民が関心を寄せている問題を解決し、その正当な権限を守る政策や措置をとっていく旨を表明する一方で、外国勢力による中国統一への干渉や台湾独立を狙う動きに強く反対する立場から、武力行使を放棄していないことをたびたび表明している。05(平成17)年3月に制定された「反国家分裂法」においては、台湾が中国から分裂することを招く重大な事態が生じたときなどには、非平和的な方式による措置を講ずると規定されており、武力行使の不放棄が明文化されている。
 00(同12)年に就任した台湾の陳水扁(ちん・すいへん)総統(当時)(民進党)は、「台湾独立」志向の強い行動をとったため、中国は激しく反発していた。これに対して、昨年5月に就任した馬英九(ば・えいきゅう)総統(国民党)は、中国との経済交流の拡大による台湾経済の発展や、独立よりも現状維持を追求する政策を掲げている。中台間では、昨年6月に両岸の実務協議窓口機関1のトップ会談が10年ぶりに開催され、12月には、中台間の直航旅客チャーター便の平日運航、海運直航および郵便直航が開始されるなど、両者の関係は進展しつつある。馬英九総統が、台湾の国際組織への参加や台湾に向けられた中国軍のミサイルの撤去などを求めているのに対して、胡錦濤国家主席は、1)台湾の国際活動への参加に関する問題は「二つの中国」、「一中一台」としないことを前提として情理を兼ね備えた段取りが可能であること、2)中台が適当な時期に軍事問題にかかる接触・交流を行い、軍事安全保障の相互信頼醸成メカニズムの構築を検討することなどを呼びかけており2、今後の中台関係の動向が注目される。


 
1)実務協議窓口機関は、中国側は海峡両岸関係協会、台湾側は海峡交流基金会である。

 
2)昨年12月31日に行われた、「台湾同胞に告げる書」30周年記念座談会における談話


 

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