第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

第2章
諸外国の国防政策など

第1節 米国

1 安全保障政策・国防政策

 06(平成18)年3月に公表された「国家安全保障戦略」1は、米国の安全は、圧政の終結と民主主義の推進に向けた国際社会の取組を主導することによって確保されるとしている。他方、こうした理念主義的な目標は米国のみで達成できるものではないことから、その実現にあたっては、同盟国を含む国際社会との協調を重視するなど、現実的なアプローチをとることとしている。
 また、昨年7月に公表された「国家防衛戦略」2は、米国の国益は、米国および同盟国を攻撃あるいは威圧から守り、紛争を抑制し経済成長を促すために国際安全保障を促進し、国際公共財(Global Commons)とそれを通じた世界市場および資源へのアクセスを確保することにあるとした。また、これらを追求するために、外交や経済的手段などとともに、軍事能力を発展させ、必要に応じてそれを行使してきたとしている。
 本年1月には、オバマ第44代米国大統領が就任した。同大統領は、その就任演説において、力のみで米国を守ることはできず、米国の理想の正当性、模範としての力などから、米国の安全保障が生じるとした。また、同年2月の議会演説において、米国のみでも米国抜きでも今世紀の脅威に立ち向かうことはできず、諸課題に立ち向かうために、古くからの同盟を強化するとともに新たな同盟を形成し、米国の全ての国力を利用するとした。


 
1)国家安全保障戦略は、合衆国法典第50篇第404a条により、大統領が毎年議会に提出することが義務付けられているものであるが、ブッシュ政権(当時)では、02(平成14)年9月および06(同18)年3月の2度公表された。

 
2)国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)は、国家安全保障戦略を実施していく上での指針であるとともに、国家軍事戦略(NMS:National Military Strategy)を始めとする国防省の戦略文書などの枠組を示すものであり、05(平成17)年3月および昨年7月に公表された。なお、ゲイツ国防長官は、昨年の国家防衛戦略の前文において、「米国は間もなく新たな大統領を迎えるが、米国が直面する複雑な脅威は残存する。本戦略は来るべき将来における青写真となるものである」と指摘している。


 

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