刊行によせて 

刊行によせて
 
防衛大臣写真
 
防衛大臣
防衛大臣揮毫

 昨年刊行された平成19年版白書は、防衛庁が省に移行して初めての白書であり、危機により強く、世界の平和により貢献できる組織になるとの意気込みが示されていました。

 しかし、それから本白書が刊行されるまでの約一年間が防衛省・自衛隊にとって輝かしいものであったかと言えば、必ずしもそうではありません。給油量取り違え及び航泊日誌誤破棄という文民統制の徹底にかかわる問題、インターネットを通じた情報流出及びイージスシステムに係る特別防衛秘密流出という厳格な情報保全体制の確立にかかわる問題、過大請求など防衛調達の透明性にかかわる問題、前事務次官が収賄の容疑で逮捕されたことといった様々な不祥事は、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を大きく損なう極めて深刻な事態であり、改めて心より深くお詫びを申し上げます。

 また、本年2月19日に発生した護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故について、国民の生命と財産を守るべき自衛隊がこのような事故を起こしたということはあってはならないことであり、心より申し訳なく思っております。今後、二度とこのような事故を起こさないよう再発防止に万全を期していく所存です。

 このような一連の事案を踏まえ、首相官邸に設置された「防衛省改革会議」において有識者の方々を交え議論が行われ、本年7月、報告書が取りまとめられました。

 この報告書においては、各種不祥事案の検討・分析を踏まえ、・規則遵守の徹底、・プロフェッショナリズム(職業意識)の確立、・全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立、の改革の原則に基づく改革提言がなされました。

 また、報告書では同時に、防衛省・自衛隊がこの三原則をより確実・効果的に実行するため、組織面での改革が必要であるとして、官邸における司令塔機能強化と、防衛省における司令塔機能強化のための組織改革などの提言も示されました。

 もとより、防衛省改革は組織改編それ自体が目的なのではなく、事案や事故の再発防止は当然のことながら、大量破壊兵器などの拡散や国際テロなどの新たな脅威や多様な事態、引き続き厳しいわが国周辺の安全保障環境などの様々な課題により迅速かつ的確に対応できるような体制を構築しようとするものです。今後、防衛省内で更なる検討を進め、防衛省の大胆な改革を着実に実行に移してまいります。

 国の独立と平和を守る上で、国民が最後に拠り所とするのは防衛省・自衛隊をおいて他にありません。だからこそ、国民に信頼され、もって国民の負託にこたえることのできる規律の厳正な組織であらねばならないと考えます。もちろん、大多数の隊員は、インド洋をはじめとする国際平和協力活動に、あるいは全国各地での日々の任務に、黙々と邁進しています。だからこそ、国民のために、このような一人ひとりの隊員のために、更には国際社会の平和及び安全に資するために、防衛省・自衛隊は、新たに生まれ変わらねばならないと考えています。

 今年の防衛白書は、このような防衛省改革への決意を込めるとともに、自衛隊の国内外での活動などについて国民の皆様と諸外国の方々に御理解をいただくようわかりやすく記述しました。また、日々の職務にあたっている隊員の生の声をコラムで取り上げることなどにより、防衛省・自衛隊のありのままの姿をお伝えできるようにも努力しました。

 この防衛白書を、多くの方々にお読み頂き、防衛省・自衛隊に対する御理解を頂くとともに、今後の防衛省改革の着実な実行に対して見守って頂く、あるいはご支援を頂くよう願っております。

 

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