第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)他省庁へ出向し勤務する自衛官の声

総合海洋政策本部事務局 2等海佐(参事官補佐) 新里勇人(しんざとはやと)


 昨年4月、「海洋基本法」が成立し、同年7月20日の施行に合わせ、内閣に総合海洋政策本部が新編され、わが国初の海洋政策の基本的な方針となる「海洋基本計画」の策定に向け始動しました。同本部事務局には、防衛省からの自衛官と事務官の出向者2名を含む、関係8府省から38名(非常勤者を含む。)の職員が集まり、新たな海洋立国の実現に向け邁進しております。
 「海洋基本計画」は、海洋に関する施策を総合的に推進するため、「海洋を知る」、「海洋を守る」、「海洋を利用する」のバランスと連携に配慮し、1)海洋の開発および利用と海洋環境の保全と調和、2)海洋の安全の確保、3)科学的知見の充実、4)海洋産業の健全な発展、5)海洋の総合的な管理、6)海洋に関する国際的協調の6つの基本方針と政府が総合的かつ計画的に講ずべき12の施策についてまとめられ、本年3月18日に閣議決定されました。
 計画作成にあたり、たとえば、「海洋の安全の確保」に関して、周辺海域や海上輸送路における安全および治安の問題にいかに取り組むか、などのテーマについて、事務局が中心になって、有識者、各種団体や一般の方々から寄せられた意見を参考に、各府省と調整・協議を行いましたが、各府省の海洋政策に対する考え方の違いなどもあったことから、とりまとめに約8か月もの期間を要しました。海洋には資源などの開発、環境保全、レジャーなど、様々な分野が凝縮されていますが、わが国にとって重要な物資などを運搬するための場というのもその一部です。したがって、私は当事務局の一員として勤務する上で、これまでの海上自衛隊のP-3C哨戒機、YS-11輸送機の操縦士としての部隊勤務や統幕、海幕などでの様々な勤務経験が、大きな財産となっていることをつくづく実感しています。
 海洋基本計画に基づく、政府一体となった施策の推進体制はまだ緒に就いたばかりですが、わが国として取り組むべき課題は山積しています。海洋政策を推し進めていくにあたり、防衛省・自衛隊は海洋基本法に謳われる海洋における平和と安全を確保する重要な役割を担う立場にあり、今後とも、関係府省との連携を図りつつ、計画の推進に努める責務があると考えています。
 
他省庁からの同僚と新里2佐(左から2番目)

 

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