2 安全保障の枠組みの地理的拡大とパートナーシップ
NATOは、地域全体の安定を目的として、冷戦終結後いわば安全保障上の空白地帯となった中・東欧地域への拡大を継続してきた
9。現在では、中・東欧諸国のほとんどがNATOに加盟するに至っており、NATO拡大に一貫して反対の姿勢を示してきたロシアとも国境を接している。
NATOは、同時に、NATO非加盟国とのパートナーシップ政策を発展させてきた。たとえば、NATO非加盟の欧州諸国との信頼醸成や相互運用性の向上を目指す「平和のためのパートナーシップ」(PfP:Partnership for Peace)
10、地中海地域の安定を目指す地中海ダイアローグ(MD:Mediterranean Dialogue)
11などが創設されている。
また、域外での活動を念頭に、NATOはオーストラリアや日本などコンタクト国
12と呼ばれる各国との関係を強化している。
NATOとロシアの関係では、9.11テロ以降、安全保障に関する共通の課題に対処する必要性から、02(平成14)年、NATO・ロシア理事会(NRC:NATO-Russia Council)が設立され、テロとの戦い、軍備管理、戦域ミサイル防衛などの分野で対話や協力の模索が続けられている
13。
EUについても、04(同16)年にポーランドやチェコなど10か国が加盟し、昨年1月にはブルガリアおよびルーマニアが加盟するなど、中・東欧に加盟国を拡大している。
(図表I-2-8-3参照)
9)最近では、04(平成16)年3月に中・東欧の4か国およびバルト三国(ルーマニア、スロベニア、エストニア、リトアニア、ラトビア、ブルガリア、スロバキア)が加盟し、また、本年4月に行われたNATO首脳会合では、アルバニアとクロアチアの加盟招請が決定された。
10)94(平成6)年に創設され、NATOと中・東欧諸国をはじめとするNATO非加盟の欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)諸国が個別に協力協定を締結している。
11)94(平成6)年に創設され、現在7か国(アルジェリア、エジプト、イスラエル、ヨルダン、モーリタニア、モロッコ、チュニジア)が参加する。政治的対話や、NATO関連活動への地中海諸国の参加を通して、地中海地域の安定を目指している。
12)コンタクト国の名称は04(平成16)年にイスタンブールで行われたNATO首脳会議以降使われており、共通の関心を有する各国とのケース・バイ・ケースでのパートナーシップを推進している。
13)一方、NATOの拡大やCFE条約など両者が意見を異にする点については、ロシアへのNATOの対応が注目される。EUとロシアとの関係においても、本年2月17日に独立を宣言したコソボへのEUによる「法の支配ミッション」の派遣をめぐり対立が指摘されている。