第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 対外関係


1 米国との関係


 オーストラリアは、ANZUS条約1(Security Treaty between Australia, New Zealand and the United States of America)に基づく米国との同盟関係を重視しており、外相・国防相による閣僚協議を毎年行うとともに、「タリスマン・セーバー」などの共同訓練も行っているほか、アフガニスタンにおける「テロとの闘い」2やイラクに対する軍事作戦に際して、艦艇、航空機、特殊部隊などを派遣した。ラッド政権は、イラク駐留軍のうちの戦闘部隊を本年半ばまでに撤収させると表明した3が、アフガニスタンについては豪軍の長期間にわたる駐留を表明し4、緊密な同盟関係が維持されている。
 
アフガニスタンで活動中のオーストラリア軍兵士〔オーストラリア国防省〕

 03(平成15)年12月、オーストラリアは、米国の主導するミサイル防衛計画への参加を決定したが、具体的な参加形態については未だ確定していない。しかしながら、04(同16)年8月、新型防空駆逐艦の戦闘システムを米国製イージス・システムにすることを決定しており、同駆逐艦が弾道ミサイル防衛に対応可能なものとなる可能性も示唆されている5。また、主力戦闘機であるF/A-18ホーネットやF-111の退役を数年後に控え、02(同14)年6月、米国の主導するF-35統合攻撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画への参加を表明するとともに、同計画の遅延に備え、昨年3月、F/A-18スーパーホーネットの購入を決定した6ほか、オーストラリア国内の米豪共同訓練施設の拡充を図るなど、米国とのインターオペラビリティの強化に努めている。


 
1)52(昭和27)年に発効したオーストラリア・ニュージーランド・米国間の三国安全保障条約。ただし、ニュージーランドが非核政策をとっていることから、86(同61)年以来、米国は対ニュージーランド防衛義務を停止している。

 
2)アフガニスタンへの豪軍の展開は9.11テロ後、01(平成13)年中に開始。本年4月の時点で約1,000名規模の部隊がアフガニスタンに駐留している。

 
3)本年6月にイラク南部に展開している監視戦闘部隊(Overwatch Battle Group)約550名および陸軍訓練部隊(Army Training Team)約60名の撤退を開始した。その他の支援部隊(空輸、海上哨戒、警護要員など、1,000名以下)は引き続き駐留している。

 
4)本年3月29日、米豪首脳会談後の共同記者会見におけるラッド首相の発言

 
5)昨年6月には同駆逐艦の船体についてスペイン製のF-100の設計を採用することを決定している。また、昨年7月、ハワード首相(当時)は、「政府が決定すれば、その駆逐艦は弾道ミサイル防衛(BMD)を実行するためにSM3ミサイルを装備することも可能である」と発言した。

 
6)ただし、ラッド現政権においては、本年2月にJSF計画への参加を含む次期戦闘機導入計画そのものを再検討することが発表された。再検討の結果、同年3月にはF/A-18スーパーホーネットは予定通り導入することが発表されたが、その後の戦闘機導入についての結論は現時点で発表されていない。


 

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