第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

5 地域各国の軍の近代化


 東南アジアの各国は、近年、経済発展などを背景として軍の近代化を進めている。空軍力については、04(平成16)年にベトナムがロシア製Su-30戦闘機を導入し、インドネシアがロシア製Su-27およびSu-30戦闘機を導入するとともに、米国からのF-16戦闘機の購入も計画中である。05(同17)年には、シンガポールが米国製F-15戦闘機の購入契約を米国との間で締結している。昨年は、シンガポールがF-15戦闘機の追加購入契約を締結し、マレーシアがSu-30戦闘機を導入したほか、タイがスウェーデン製JAS-39戦闘機の導入を決定している。
 また、海軍力については、これまで潜水艦を保有していなかったマレーシアが、02(同14)年にフランスとスペインが共同開発したスコルペン級潜水艦の購入契約を締結したほか、05(同17)年には、シンガポールがスウェーデン製ヴェスターゴトランド級潜水艦の購入契約を締結している。また、昨年、シンガポールではフランス製フォーミダブル級フリゲートの1番艦が就役し、09年(同21)までに、自国建造分を合わせ全部で6隻が就役する予定である。インドネシアでは、昨年にオランダ製シグマ級コルベット2隻が就役し、09年(同21)までに全部で4隻が就役する予定である。さらに、インドネシアは昨年9月、ロシアとの間で、軍事技術および防衛協力の強化で合意し、10億米ドル規模のロシア製兵器の調達を政府借款で行う合意書に署名しており、これにはキロ級潜水艦2隻などの兵器が含まれていると伝えられている。
 これら各国の軍事力の近代化の背景については、アジア通貨危機以後の経済発展のほか、地域における緊張の存続が存在するとし、軍備拡張競争には到っていないものの、各国が互いの防衛力整備の動向に注目し、反応している事例もみられるとの指摘もある1


 
1)英国の国際戦略研究所(IISS)による「ミリタリーバランス2008」プレス発表(本年2月5日)


 

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