第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 能力強化の重点分野


 06(平成18)年のQDRは、以上のような安全保障環境認識および国防戦略を踏まえ、伝統型課題に対処する能力を維持しつつ、非正規型、壊滅型、混乱型課題への対処能力を向上させる必要があるとしている。具体的には、以下の4つの重点分野における能力強化が必要であるとしている。
1)テロ・ネットワークの打破:テロとの闘いに勝利するには、テロ・ネットワークへの執拗な攻撃により、テロ・ネットワークによる聖域確保を阻止することが必要である。このため、米軍は、情報収集能力や特殊作戦能力などの向上に加えて、政府関係機関との連携強化や他国の治安部隊への訓練などにも努めることとしている。また、軍事面のみならず、思想面においてもテロ・ネットワークに勝利するためには、戦略広報(Strategic Communication)の強化や語学教育の充実などに取り組む必要があるとしている。
2)本土防衛の強化:米本土に対する脅威に対処するためには、侵略に対する抑止態勢を維持するとともに、政府関係機関との協力関係を強化する必要がある。このため、ミサイル防衛などにより抑止力を強化するとともに、政府関係機関との連携要領を充実させることで、攻撃発生後の被害拡大を防ぐ能力も向上させるとしている。
3)戦略的岐路にある国家の選択肢形成:米国は、安全保障協力の拡大などにより、今後の安全保障を左右する可能性のある国家が国際社会における建設的なパートナーとなるよう働きかける一方、そうした働きかけが失敗した場合に備えて、同盟国などの能力を強化するとともに、米軍の軍事態勢見直しや重要分野における優位の維持などに努めることとしている。
4)大量破壊兵器の取得または使用の阻止:敵対的な国家などによる大量破壊兵器などの脅威に対処するためには、予防措置と対応措置の双方が必要となる。したがって、米軍は、予防措置として、大量破壊兵器関連物資の特定・追跡に関する能力向上などに努める一方、大量破壊兵器などによる攻撃が発生した場合に備えて、被害を軽減するために必要な能力などを構築することとしている。
(図表I-2-1-1 参照)
 
図表I-2-1-1 QDR2006における四つの課題と重点分野

 

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