第III部 わが国の防衛のための諸施策 

4 日豪防衛交流

 オーストラリアは、自由と人権の尊重、民主主義といった基本的価値観を共有する重要なアジア太平洋地域のパートナーである。安全保障面でもオーストラリアとわが国はともに米国の同盟国として戦略的利害が一致しており、防衛分野において多くの関心を共有している。このような観点から、オーストラリアとの間で防衛交流を進めて協力の基盤をつくり、より効果的に協調、協力を図ることは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって重要である。
 特に近年においては、防衛交流が深化、拡大してきており、イラクにおける協力、災害の際の人道支援など、安全保障分野における二国間協力3が、着実に進展している。
 このような状況を踏まえ、二国間の安全保障協力を包括的な枠組みの下で一層強化するため、本年3月13日、安倍総理とハワード豪首相の間で、安全保障協力に関する日豪共同宣言4を発表した。
 本共同宣言は、安全保障分野における二国間協力などをさらに強化拡大するための枠組みを策定するものであり、協力の分野として、少なくとも次に示す9項目を含むとされている。
 
日豪防衛・外務閣僚協議

1) 国境を越える犯罪との戦いに関する法執行(麻薬・前駆物質の不正取引、密入国および人身取引、通貨偽造、ならびに武器の密輸を含む。)
2) 国境の安全
3) テロ対策
4) 軍縮ならびに大量破壊兵器およびその運搬手段の拡散対抗
5) 平和活動
6) 戦略的評価および関連する情報の交換
7) 海上および航空の安全確保
8) 災害救援を含む人道支援活動
9) 感染症大流行の発生時を含む緊急事態対応計画
 また、前述の協力の一環として、適当な場合は、
1) 人的交流
2) 人道支援活動の分野を含む、協力の効果をさらに向上させるために両国が共に行う訓練
3) 法執行、平和活動および地域のキャパシティ・ビルディングを含む分野における調整された活動
を含む実際的な協力を強化するとしている。
 さらに、今後の実施事項として次の4項目を挙げている。
○ 協力分野における安全保障協力を推進するため、具体的な措置を伴う行動計画の策定
○ 防衛大臣間の対話の強化と年次ベースでの開催
○ 外務大臣間の戦略対話の強化と年次ベースでの開催
○ 定期的な大臣間の対話の創設を含め、防衛・外務両省の合同対話の強化
 本共同宣言に基づき、本年6月に東京において、久間防衛大臣とネルソン豪国防大臣との間で防衛相会談が、さらに、初めての日豪防衛・外務閣僚協議(「2+2」)が相次いで行われた。防衛相会談では、日豪間の防衛交流の進展やカンボジア国連PKOへの参加以来の国際平和協力活動での協力の積み重ねを評価し、さらに、1)航空機、艦艇の訪問を通じた部隊間交流の促進、人的交流の拡充を含めた二国間の防衛交流の拡大、2)二国間協力の日米豪三か国の協力や多国間の協力への貢献、3)共同宣言の防衛分野での行動計画として、03(平成18)年に防衛首脳間で合意された防衛交流の発展に関する覚書の改定作業を開始することを決定した。「2+2」においてもこれらの決定を評価・歓迎し、その旨の共同発表5が出された。
 これらを踏まえ、現在、防衛協力の拡大に向けて、日豪間で協議を進めているところである。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流

 日豪間では、両国の防衛首脳をはじめとするハイレベルの交流が継続的に行われている。03(同15)年9月、ヒル豪国防大臣(当時)が訪日した際、石破防衛庁長官(当時)と会談し、両国の防衛交流の発展に関する覚書に署名した。
 本年3月、久間防衛大臣は、来日中のハワード首相と会談し、今後の日豪の防衛交流の進展を確認した。また、本年6月、久間防衛大臣は、第6回国際戦略研究所(IISS:International Institute for Strategic Study)アジア安全保障会議への出席の機会をとらえ、ゲーツ米国防長官、ネルソン豪国防大臣と初となる日米豪防衛相会談を行い、今後とも3か国の安全保障・防衛協力関係を推進することで意見が一致した。
 さらに、昨年9月、シェファード空軍本部長が、本年3月にはレイ陸軍本部長が訪日し、それぞれ吉田空幕長(当時)、森陸幕長(当時)と会談したほか本年2月には吉川海幕長が訪豪し、シェルダース海軍本部長と意見交換を行った。

(2)防衛当局者間の定期協議など

 96(同8)年以降、毎年、局長・審議官級の防衛当局間協議とともに、外交当局を含めた安全保障対話を行っている。また、統幕、陸・海・空自衛隊とオーストラリア軍との間においても継続的な協議をするとともに、留学生の派遣・受入れや研究交流を行っている。
 特に、近年は、二国間の協力進展にあわせて、各協議を頻繁に行っており、防衛当局者間協議についても、昨年2回実施したことに続き、本年5月にも行った。また、本年4月には、日米豪3か国の局長級会合を初めて実施し、3か国間の防衛協力などについて協議を行った。

(3)部隊間の交流など

 海自とオーストラリア海軍は、艦艇や航空機の相互親善訪問を実施し、部隊間での交流を活発に行っている。最近では、昨年5〜6月に、海自哨戒機(P-3C)が初めてオーストラリアを親善訪問し、訓練などを実施した。
 陸自は、東ティモールや、イラクなどの国際平和協力活動においても、現地に派遣されていたオーストラリア陸軍部隊との交流を行った。


 
3)具体的には、カンボジアPKO以来イラク・サマーワでの協力、インド洋津波における災害の際の人道支援などがあげられる。
 
4)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2007/03/13.pdf>参照
 
5)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2007/06/06d.html>参照

 

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