第II部 わが国の防衛政策の基本 

2 任務の位置付けの見直し

 防衛大綱においては、わが国の平和と安全をより確固たるものとするため、国際社会の平和と安定のために主体的・積極的に取り組むとされるとともに、国際平和協力活動は、防衛力の役割の一つとされた。また、国際平和協力活動に適切に取り組むため、自衛隊の任務における同活動の適切な位置付けを含め所要の体制を整えるとされた。
 また、周辺事態への対応は、放置すれば日本に対する武力攻撃に波及する可能性もあり、わが国の平和と安全の確保の観点から重要である。さらに、第二次世界大戦時の遺棄機雷の処理に限らず、船舶の航行安全のための機雷掃海も、国民の安全確保のために重要である。また、多くの邦人が海外を訪問し、滞在する今日、海外での紛争などの際の在外邦人の輸送も、国民の安全確保のために重要な活動となっている。
 今後の安全保障環境において防衛力に求められているこれらの役割について、防衛省として適切に取り組む体制を整備することが必要である。これらの活動を、従来の付随的業務から本来任務へと変更する必要があるのは、そのような体制整備の一環である。
 また、自衛隊が国際平和協力活動に主体的・積極的に取り組むためには、教育訓練体制、所要の部隊の待機態勢、輸送能力の向上といった体制整備を進める必要がある。こうした体制整備は、自衛隊の任務における国際平和協力活動の位置付けを見直し、本来任務として位置付けた上で行うことが適切である。
 本来任務化により、わが国の国際平和に対する取組を、国内のみならず国際社会にメッセージとして示すことができる。また、厳しい環境の中で活動する隊員が一層の自覚と誇りをもって職務に専念し得るものと考えている。
 本来任務化は、既に法律で定められている国際平和協力活動等の自衛隊法上の位置付けを改めるものであり、新たな任務を自衛隊に付与するものではない。また、現行法上規定されている国際平和協力活動や国際緊急援助活動などの具体的な自衛隊の活動の範囲、権限などの内容を変更するものでもなく、これらの活動は、引き続き、憲法の枠内でそれぞれの活動の根拠となる法律の規定に基づいて実施される。

 

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