第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 北方領土におけるロシア軍

 ロシアが不法に占拠するわが国固有の領土である北方領土のうち国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島と色丹(しこたん)島に、旧ソ連時代の78(昭和53)年以来、ロシアは、地上軍部隊を再配備してきたが、近年、人員数は減少傾向にあり、現在は、ピーク時に比べ大幅に縮小した状態にあると考えられる。しかし、この地域には、依然として戦車、装甲車、各種火砲、対空ミサイルなどが配備されている。北方領土の地上軍に関しては、93(平成5)年にエリツィン大統領(当時)が訪日した際、四島駐留軍の半数を既に撤退させ、国境軍を除き残りの半分も必ず撤退させる旨公式に表明した。また、90年代後半には、日露間の各種公式協議の場で、北方領土駐留ロシア軍が削減されている旨の発言がロシア側より繰り返しなされた。北方領土の兵員数については、91(同3)年には約9,500人が配備されていたとされているが、97(同9)年の日露防衛首脳会談において、ロジオノフ国防相(当時)は、北方領土の部隊が95(同7)年までに3,500人に削減されたことを明らかにした。しかし、05(同17)年7月、北方領土を訪問したイワノフ国防相(当時)は、四島に駐留する部隊の増強も削減も行わないと発言し、現状を維持する意思を明確にした。
 このように、わが国固有の領土である北方領土へのロシア軍の駐留は依然として継続しており、早期の北方領土問題の解決が望まれる。

 

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