第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

6 国防科学技術の動向

 近年の人民解放軍は、ロシアなど国外から輸入された装備だけでなく、国産の新型装備も導入しており、中国の軍事力近代化は、国防科学技術の発展にも支えられてきている。中国の国防産業は、かつて、過度の秘密主義などによる非効率性のために順調な成長が妨げられてきたが、近年は、国防産業の改革が進められている。「2004年の中国の国防」白書では、特に、軍用技術を国民経済建設に役立てるとともに、民生技術を国防建設に吸収するという双方向の技術交流に重点を置いており、具体的には、国防産業の技術が、宇宙開発や航空機工業、船舶工業の発展に寄与してきたとされている。
 なお、中国は「2006年の中国の国防」白書で、「軍民両用産業分野における国際協力及び競争を奨励、支持」するとしており、軍民両用の分野を通じて外国の技術を吸収することにも関心を有しているとみられる。
 宇宙開発では、03(平成15)年の「神舟5号」による初の有人宇宙飛行の成功に続き、05(同17)年10月にも、2人の飛行士を乗せた「神舟6号」が、5日間の宇宙飛行を成功させ、あらためてこの分野における中国の技術力を世界に印象付けた。中国の宇宙開発分野と軍事分野では、組織面のつながりがあり、宇宙ロケットと弾道ミサイルなどについては、技術を共有する部分もあることから、双方向の技術交流は、今後一層推進されていくものと考えられる。
 中国は、本年1月に対衛星兵器の実験を実施した。この実験については不明な点が多いものの、基本的には弾道ミサイルの技術を応用したものと見られ、標的となる人工衛星への終末誘導などにおいて高度な技術を使用した可能性がある。この実験は、中国が人工衛星に対する攻撃も軍事作戦の一部として想定している可能性を示すものと考えられる。

 

前の項目に戻る     次の項目に進む