中国は、従来から、具体的な装備の保有状況、整備ペース、部隊レベルの編成、軍の主要な運用や訓練実績、国防予算の総額や内訳の詳細などについて明らかにしていない。中国が、政治、経済的に地域の大国として着実に成長し、軍事に関しても、地域の各国がその動向に注目する存在となっている中、中国に対する懸念を払拭するためにも、中国が国防政策や軍事力の透明性を向上させていくことがますます重要になっている。
　中国は、98（平成10）年以降2年ごとに、国防白書である「中国の国防」を発表してきており昨年12月にも「2006年の中国の国防」を発表した。中国が、自国の安全保障についてまとまった文書を継続して発表していることは、軍事力の透明性向上に資する動きとして評価できる。他方で、たとえば、国防費の内訳の詳細などについては、人員生活費、活動維持費、装備費に3分類し、それぞれの総額と概括的な使途を公表しているのみであり、過去5回の白書によって、目に見える形で透明性の向上が図られてきたわけではない。
　また、本年1月に中国が対衛星兵器の実験を実施した際も、わが国からは、中国側に対し宇宙の安全利用および安全保障上の懸念を申し入れるとともに、事実関係および中国側の意図について説明を求めたが、この実験については、中国政府から実験の内容や意図などについてわが国の懸念を払拭するに足る十分な説明がなされなかった。
　今後のさまざまな機会を通じて、中国が軍事力などの透明性を高めていくことが望まれる。