第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

2 自衛隊の訓練


(1)統合訓練
 わが国への武力攻撃などが発生した場合に、自衛隊が、その能力を最も効果的に発揮するためには、平素からの、陸・海・空自衛隊の統合訓練が重要である。このため自衛隊は、従来から2以上の自衛隊が協同する統合訓練を行い、その内容の充実を図ってきている。そして、本年3月の統合運用体制への移行後においては、統合運用による円滑な任務遂行を図るため、統合訓練について、従来より充実・強化している。
 例えば、訓練内容は、わが国への直接の脅威を防止・排除するための演習だけでなく、国際平和協力活動なども想定されている。具体的には、自衛隊統合演習5、日米共同統合演習、弾道ミサイル対処訓練に加えて、国際平和協力演習、統合国際人道業務訓練などがある。
(図表6-2-10参照)
 
図表6-2-10 統合演習の実績(平成17年度)

(2)各自衛隊の訓練
 各自衛隊の部隊などで行う訓練は、隊員それぞれの職務の練度向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な行動を練成することを目的とした部隊の訓練とに大別される。
 隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練は、小部隊から、大部隊へと規模を拡大しつつ訓練を積み重ね、総合的な能力の発揮を目標として行う。また、自衛隊では、わが国の防衛のための訓練に加え、近年、周辺事態への対応、不審船や武装工作員などによる事態への対処、大規模テロに際しての自衛隊の施設の警護など、自衛隊の任務の多様化に対応した訓練の充実にも努めている。各自衛隊の部隊訓練の概要は次のとおりである。
(図表6-2-11参照)
 
図表6-2-11 各自衛隊の主要演習実績(平成17年度)

ア 陸上自衛隊
 陸自では、普通科(歩兵)、特科(砲兵)、機甲科(戦車・偵察)などの各職種ごとの部隊訓練、ほかの職種の部隊と協同した訓練、多様な職種の部隊の総合戦闘力を発揮させる訓練などを行い、部隊の練度の向上を図っている。
 こうした訓練は、可能な限り実戦に近い環境下で行うよう努めており、さまざまな施設・設備も有している。具体的には、連隊・師団レベルの指揮・幕僚活動を演練するための指揮所訓練センター、中隊レベルなどの訓練を行うための富士訓練センターや市街地訓練場などである。このような施設での訓練は、実戦的な感覚を身につけさせるとともに、客観的な評価が可能であり、部隊の練度の向上に寄与している。
 このほか、師団規模の大部隊の長距離機動能力の向上のための協同転地演習など、総合的な訓練を行っている。
 
各小隊長に命令を徹底する陸自第46普通科連隊第2中隊長

イ 海上自衛隊
 海自では、周期訓練方式をとっている。これは、要員の交代や艦艇の修理・検査の時期を見込んだ一定の期間を1つの訓練周期とし、その訓練周期の中で、段階的に練度を向上させる方式である。1つの訓練周期では、初期段階の訓練から高練度の訓練までが実施される。
 初期段階では、戦闘力の基本単位である艦艇や航空機ごとのチームワーク作りを主眼とした部隊訓練が行われる。その後、練度の向上につれて、部隊規模を拡大し、艦艇相互や艦艇と航空機間の連携の訓練などを行うとともに、より大きな部隊間での連携ができるよう、海上自衛隊演習などの総合的な訓練を行っている。
 
手旗訓練中の海自隊員

ウ 航空自衛隊
 空自は、戦闘機、地対空誘導弾、レーダーなどの先端技術の装備を駆使する集団である。このため、訓練の初期段階では個人の専門的な知識や能力を段階的に引き上げることを重視し、戦闘機部隊、航空警戒管制部隊、地対空誘導弾部隊などの部隊ごとに訓練を行っている。この際、隊員一人一人の能力と航空機などの装備品を有機的に機能させ、部隊の持つ総合力を発揮させることを目指している。そして、部隊の練度の向上にともない、これら部隊間の連携要領を訓練している。さらに、全国規模の部隊間の連携要領の訓練として、航空輸送部隊や航空救難部隊などを加えた、航空総隊総合訓練などの総合的な訓練も行っている。
 
訓練中のF-2戦闘機


 
5)演習とは、訓練の一部で、実戦の状況を想定して行う訓練のこと。


 

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