2 化学兵器・生物兵器
(1)化学兵器禁止条約
「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」(化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)
6)は、92(平成4)年に採択され、97(同9)年にわが国を含む原締約国87か国により発効し、本年3月現在、178か国が締約国となっている。CWCは化学兵器の開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲、使用を禁止し、その廃棄を義務付けることにより化学兵器の廃絶を目指すものであり、その実効性を確保するために、厳格な検証制度を定めている。
防衛庁・自衛隊は、80(昭和55)年以降、この条約の交渉の場に、陸自から化学防護の専門家を随時派遣し、日本代表団の一員として条約案の作成に協力してきた。また、条約の発効に伴い、条約の定める検証措置などを行うため、オランダのハーグに設立された化学兵器禁止機関(OPCW:Organization for the Prohibition of Chemical Weapons)に、97(平成9)年以降、化学防護の専門家である陸上自衛官を派遣している。
参照>
資料54
なお、陸自化学学校(埼玉県さいたま市)では、条約の規制対象である化学物質を防護研究のために少量合成していることから、条約の規定に従い、同年以降5回の査察を受入れている。
また、中国遺棄化学兵器廃棄処理事業については、CWCに基づいて、政府全体として取り組んでいる。これまでの調査の結果、中国に遺棄されている旧日本軍の化学兵器は約30〜40万発にのぼると推定される。
防衛庁・自衛隊は、遺棄化学兵器処理を担当する内閣府に陸上自衛官を含む職員3名を出向させているほか、中国国内で行われる遺棄化学兵器の発掘・回収事業に化学と弾薬の専門家である陸上自衛官を派遣するなど、この事業の円滑な遂行のために不可欠な協力を行っている。
99(同11)年から開始されたわが国による本格的な処理事業において、これまでに5回の処理事業に自衛官を現地に派遣し、砲弾の鑑定、応急安全化処置などを行っている。最近では、昨年10月、中国吉林省敦化市蓮花泡での発掘回収事業に自衛官8名を現地に派遣した。
(2)生物兵器禁止条約
「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」(生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention)
7)は、75(昭和50)年より発効し、本年3月現在、155か国が締約国となっている。
BWCでは、その強化のため、02(平成14)年11月に、今後の作業計画が全会一致で合意された。この作業計画に従い、条約の強化に関する5分野
8について議論され
た。
防衛庁・自衛隊は、BWC検証措置導入に関する多国間交渉などの関連会合に、薬学・医学の専門家である自衛官を派遣するなど、BWC強化のための取り組みに対して協力を行っている。
(3)オーストラリア・グループ
オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)
9は、生物・化学兵器の原材料、製造設備、関連技術の輸出規制を通じて、生物・化学兵器の拡散防止を行っている。AGには本年3月現在、わが国を含む39か国が参加しており、防衛庁は、94(同6)年から毎年AGの会合に職員を参加させている。
8)1)条約の禁止事項を実施するための国内措置(刑罰法規の策定含む。)、2)病原菌・毒素の安全管理・監視体制を確立するための国内措置、3)生物兵器の使用の疑惑および疑義のある疾病の発生に対処し、調査・被害の緩和を行うための国際的対応能力の強化、4)感染症の監視・探知・診断に対処するための国内・国際的努力の強化、5)科学者のための行動規範