第5章 国際的な安全保障環境の改善 

2 日露防衛交流


 ロシアは、欧州、中央アジアおよびアジア太平洋地域の安全保障に大きな影響力を持ち、かつ日本の隣国であるため、日露の防衛交流を深め、協力の基盤をつくることは極めて重要である。
 防衛庁は、97(平成9)年のクラスノヤルスクでの日露首脳会談以降、さまざまな分野で日露関係が進展する中、着実にロシアとの防衛交流を進めている。
 99(同11)年には、日露防衛交流の方向性を示す覚書(おぼえがき)が結ばれた。さらに、03(同15)年1月に、小泉総理公式訪露の際に署名された「日露行動計画」2の中で、両国首脳は、ハイレベル交流、防衛当局間協議、共同訓練、親善訓練などを引き続き行うことで両国の防衛交流を着実に進めるとの意思を相互に確認した。また、昨年11月、プーチン・ロシア大統領が訪日した際に、小泉総理と会談し、「日露行動計画」に基づき、日露関係が幅広い分野で順調に発展していることを確認した。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 96(同8)年に、旧ソ連時代を含めて初めて臼井防衛庁長官(当時)が訪露して以来、日露間のハイレベルの交流が進展している。
 本年の1月には、額賀防衛庁長官が訪露し、99年(同11)年に結ばれた日露防衛交流に関する覚書の改定が行われた。その際、イワノフ・ロシア国防大臣は、「日露行動計画が防衛当局間の協力を深めていく良い基盤となっており、海の交流が最も進んでいるが、陸や空でもさらに交流を発展させたい」と述べ、陸自やロシア連邦地上軍が行っている演習などへの相互オブザーバーの派遣、空自とロシア空軍との代表団および航空機の相互訪問などについて合意した。また、額賀防衛庁長官はロシア連邦軍参謀本部大学を訪れ、日本の防衛戦略と日露関係についてのスピーチを行った。
 また、本年5月には、森陸幕長が訪露し、マスロフ・ロシア地上軍総司令官と率直な意見交換を行った。
 
イワノフ・ロシア国防大臣(左)と握手を交わす額賀防衛庁長官(右)
 
森陸幕長(左)とマスロフ ロシア地上軍総司令官(右)

(2)防衛当局者間の定期協議など
 防衛庁は、局長・審議官級の防衛当局間協議を定期的に行っているほか、両国間の防衛交流の進め方全般について協議する日露共同作業グループ会合、日露海上事故防止協定締結に基づく年次会合などを継続的に行っている。
 また、統幕とロシア連邦軍参謀本部とのスタッフトークス(幕僚懇談)をはじめ、陸・空自衛隊とロシア地上軍・空軍との間でも活発な対話などが行われている。
 さらに、防衛研究所は、ロシア国防省関係研究機関3との間で、日露防衛研究交流を継続的に行っている。

(3)部隊間の交流など
 陸自とロシア地上軍は、03(同14)年以来、北部方面隊とロシア極東軍管区との間で部隊指揮官が相互に訪問するなどの交流を行っている。昨年6月にも、ロシア極東軍管区司令官が訪日し、北部方面総監と意見交換を行った。
 海自とロシア海軍は、96(同8)年の海自艦艇のウラジオストク訪問以来、毎年艦艇の相互訪問を行っている。また、98(同10)年から日露捜索・救難共同訓練を行っており、昨年6月には、海自艦艇の訪露の機会を利用して、第7回日露捜索・救難共同訓練が行われた。また、同月、自衛艦隊司令官が初めて訪露し、ウラジオストクにてロシア太平洋艦隊司令官と意見交換を行った。


 
2)<http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/01/10keikaku.html

 
3)ロシア連邦軍参謀本部軍事戦略研究センターなど。


 

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